安倍川もち
石部屋 住所:静岡市葵区弥勒2丁目5-24
浮世絵にも描かれた歴史ある名物をシリーズでご紹介します。第二回は東海道五十三次の19番目の宿場、府中(駿府とも呼ばれる/現在の静岡市葵区)の安倍川もちです。
安倍川もちの歴史は、慶長(1596-1615年)の頃、なんと400年以上前から!その頃から美味いもの名物番付のいつも上位だったそうです。
もとはきな粉だけのもので、評判が高くなったのは徳川時代にとても貴重だった駿河の白砂糖をまぶしたことから。
名前の由来は、安倍川上流にある井川の金山で採れる砂金と、きな粉(金の粉)の語呂合わせから「安倍川の金な粉もち」として徳川家康に献上したところ、たいへん喜ばれたことから「安倍川もち」になったといわれています。
歌川広重『東海道五拾三次之内 府中 安部川』静岡市東海道広重美術館蔵
安部川を渡る旅人の様子。駕籠に乗った女性、肩車で渡る姉さんかぶりの女性、荷をつけた馬を引く人足(にんそく)などが描かれています。
安倍川と旧東海道が交わる付近(静岡市葵区弥勒)、安倍川橋のたもとに、「石部屋」という文化元年(1804年)に創業した安倍川もちのお店があります。明治時代中期まで安倍川のほとりに軒を連ねた茶屋はなくなり、唯一残ったお店がこの「石部屋」。昔ながらの製法を守り続ける老舗として現在もなお営業を続けています。
歌川広重『東海道五十三次之内 府中 あへ川遠景』静岡市東海道広重美術館蔵
安倍川の近くには名物のあべ川餅の店が軒を連ねていたといわれています。
石部屋のこだわりは、毎朝ついたお餅を注文を受けてから仕上げるという、作り立ての味!もち米100%のつきたてのお餅に、こしあんを絡めたものときな粉をまぶし上から白砂糖をかけたもの、2種類の味を楽しむことができます。しっかりとしたお米の旨味のあるお餅に、滑らかでほど良い甘さのこしあんときな粉の香りが広がる、とても上品な味。
できたてふわふわのお餅を店内で食べるのがベストですが、もちろんお持ち帰り用も販売されています。
お土産は2人前から。
昔、駿府の人たちが西へ旅立つ時は、この石部屋で別れの酒宴を催したり、また出迎えもしたといいます。
かつて東海道を往来した旅人を魅了した「安倍川もち」は、現代も変わらず東海道名物として旅を楽しむ多くの人に親しまれています。
TEL:054-252-5698
FAX:054-252-5698
石部屋 住所:静岡市葵区弥勒2丁目5-24
※掲載情報は 2017/04/04 時点のものとなります。
学芸員/栄養士
大森久美
栄養学を学んだ後、武蔵野美術大学卒業。芸術学士、学芸員資格を取得。2006年特定非営利活動法人ヘキサプロジェクトを設立。2010年より現地法人ヘキサプロジェクト・ロンドン・リミテッドディレクター。美術館のキュレーションを行うかたわら、アート/デザインのワークショップなどの教育普及や、地方で伝統の技を守り続ける職人達との商品開発にも精力的に取り組む。日本文化の奥深さを伝えることをミッションに、食とアートのスペシャリストとして日本の美意識を国内外に発信中。