【クローズアップ】スイーツに込められたシェフの想いをしっかり届けたい 佐藤ひと美

【クローズアップ】スイーツに込められたシェフの想いをしっかり届けたい 佐藤ひと美

記事詳細


チョコレートが大好きだったOLからスイーツコンシェルジュの認定を受けたのをきっかけに、今ではチョコレートだけではなくスイーツ全般へと知識の幅を広げ、スイーツライターとして活躍されている佐藤さん。人気ブログを主軸に、スイーツの魅力だけではなく、それを作り上げるシェフたちの想いを伝えることも大切にしています。そんな佐藤さんに、初めて高級ショコラの魅力を知るきっかけになったという「ラ・メゾン・デュ・ショコラ」の青山店にて、お話を伺いました。

隠れた歴史を知ることでスイーツに目覚める

Q:まずは、佐藤さんの現在の活動について教えていただけますか?
現在は名古屋を拠点としています。もともと一般企業でオフィスワークをしていましたが、昨年の夏頃から食の世界でやっていきたいという思いが強くなり、昨年末に退職。年明けからはスイーツライター、スイーツジャーナリストとしての活動を本格化させています。

 

Q:チョコレートはいつ頃から好きだったのですか?
保育園に入る以前から好きでしたね。私は祖父母に育てられていて、祖父が毎月海外に出張に行く人だったこともあって、家には祖父がお土産で買ってきてくれた外国のチョコレートやお菓子が常にあったんです。だから毎日のように外国のチョコを食べていたし、学生になってからもカバンの中には常にお菓子がいっぱい入っているという生活を送っていました。

 

18歳になって名古屋に住み始めて、市内にある百貨店の催事で高級なショコラに初めて出会いました。名古屋高島屋で毎年一度、バレンタインの時期に開催される「アムール・デュ・ショコラ」という、チョコレート好きの間では有名なイベントがあります。そこに足を運んで、フランスのブランドのショコラを食べた瞬間に「この違いは何?!」と衝撃を受けて、一気に高級路線に走りました。そして、フランスへ行く人に「おすすめのものを買ってきて」とお願いした中で「ラ・メゾン・デュ・ショコラ」のトリュフに出会いました。それまで食べたことのない味わいだったので、「これが本物のトリュフというものなのだろうか?」と疑問に思った私は、フランスのショコラトリーのトリュフと名の付くものを次々と集めて食べ比べをしました。複数のスイーツを集めて食べ比べるようになったのは、これがきっかけですね。そして比べてみた結果、「ラ・メゾン・デュ・ショコラ」のオーソドックスなトリュフは、カカオそのものの味の濃厚さ、上品さが最も感じられました。私はチョコレートの脂っこさに反応するところがあって、飲み込んだときに喉にまとわりつく感じが苦手なのですが、ここのトリュフはそうではなく、一気に溶け入るような感覚でした。

 

Q:「スイーツ検定」を受けて、スイーツコンシェルジュになろうと思ったきっかけは?
日本スイーツ協会が主催する「スイーツ検定」のチラシを見たのがきっかけで、スイーツコンシェルジュのことを知りました。もともとチョコレートが大好きだったこともあり、チラシにある「スイーツ好きな方」という文字に反応したんです。ちょうどその頃、名古屋のシェフと知り合い、スイーツの歴史について教えていただいたところだったので、いいタイミングかなと思ったのも理由です。受験して合格したのは2013年のことです。受験教材の中にはスイーツの歴史も含まれていましたが、そうやって歴史を知ると、それまでデパートやパティスリーで見ていたケーキの見方が変わったんですね。これを機にスイーツに関する知識をいろんな人たちに広めていきたい、という思いが募ってブログを書き始めました。すると、いろんな方から私のブログが「わかりやすい」という感想をいただくようになり、ライターとしてスイーツをお仕事にしていけたら……と考えるようになりました。

 

それまではパティスリーには1~2ヶ月に1度行く程度で、チョコレートは毎日食べているという状況でしたが、勉強したいという思いがあったり、ライターやコンシェルジュという肩書きがある以上、人よりスイーツについて知っておかなきゃいけないという気持ちもあり、時間をみつけては常にお店を回るようになりました。そうすることで、シェフの方たちとの交流の場も増えていきました。

 

Q:今振り返ると、人生の転機というのはいつでしょうか?
スイーツコンシェルジュの検定を受けたことですね。最初にベーシックを受けて合格してからは、名古屋だけじゃわからないことも多いと感じ、大阪や東京にも足を運ぶようになりました。まだまだ知らないことも多い世界なので、いろんなところを回って、知識に深みを持たせたいという思いがあります。名古屋は大阪と東京どちらにも行きやすく、拠点としてはベストだと思っています。

【クローズアップ】スイーツに込められたシェフの想いをしっかり届けたい 佐藤ひと美

プロ目線よりも、利用者目線を大切に

Q:初めて訪問するお店に行くときは、念入りに下調べをされるのでしょうか?
一般客としての目線をまずは楽しみたいので、あえて何も調べず、完全にプライベートな状態で立ち寄ることが多いです。初回ではお店の雰囲気や味を見て、2回目は「スイーツの歴史がある中で、今そのお店はどうなのか」という目線で、がっつり調べてから訪れます。そしてどのお店も、1つの商品だけでは判断したくないので、初回では必ず5~6種類は食べてみます。ショコラティエなら、タブレットがあれば必ず選んで、ノアールと呼ばれるノーマルなチョコレートも選びます。さらに、素材の組み合わせなどが一番ほかのお店にはなさそうなものを探し、断面を見るのも好きなので、2層になっているタイプがあればそれも選びます。

 

パティスリーの場合は、いちごのショートケーキはあえて外しますね。いちごショートの場合、イチゴと生クリームの味が大半を占めているだけで、日本発のものだし、シェフのこだわりよりもお客さん目線で出しているお店が多いと聞きます。だからシェフの技術がより如実に表れている商品を選ぶようにしています。フランス菓子のお店なら、オーソドックスなフランス菓子に、そのお店で一番出ているもの、パイ生地を使ったものがあればそれも選んで。あとは、シェフの変態さがわかるようなものとか(笑)。

 

初回訪問したお店のスイーツを食べるときの飲み物は、お水を選びます。そして2度目に訪問したときに、シェフがいらっしゃれば「どんな飲み物が合うと思いますか?」と尋ねて、おすすめいただいたものを実際に合わせて楽しんだりしています。今は1ヶ月に1度は東京に行くので、初回からそれほど期間を空けずに再来訪することが多いですね。

 

Q:日頃、「少なくとも毎日1店は来店する」など、ノルマや目標を設けていますか?
それは全く考えていません。それをしてしまうと、いつか嫌になってしまうんじゃないかと思います。なので、例えば東京に行く日、地元のパティスリーを回る日というのを決めたら、まずは新店や新商品の出たお店に行こうと決めます。あとは、その目的のお店の周辺にあるお店に伺う、という感じで1時間1店のペースで1日に何件も回るのがいつものスタイルです。2度目以降は、ブログで写真を載せて紹介する前提なので、写真映えすることも意識しながら商品を選んでいます。私がこれまで訪問したお店は、ショコラトリーで1000軒以上、パティスリーなら3000軒は軽く超えていますね。

【クローズアップ】スイーツに込められたシェフの想いをしっかり届けたい 佐藤ひと美

スイーツとの出会いというアクションを後押ししたい

Q:スイーツをブログなどで紹介するときに心がけていることは?
私は一つのスイーツに対して、たくさん写真を撮ります。その中から、自分の感じたものが一番表現できている写真はどれか、という観点で見直したときに「そうそう、これ!」と思える写真を選ぶようにしています。例えばスイーツの内側って、ぱっと見ただけではわからないものですが、その内側の構成にこそシェフが力を注いでいたりするので、それがちゃんとわかるような写真を選びます。

 

テキストの表現に関しては、特別意識していることはありません。ただ、以前シンガーソングライターをしていた経験があるためか、私の文章表現には詩的なところがあると言われます。比喩の仕方など、いろいろ想像がしやすいのかな?と思っています。必ず入れるようにしているのは、そのスイーツを通してシェフは何を伝えたかったのか、どんな想いを込めてそのスイーツを作ったのか、ということです。中には「パッとレシピが浮かんだ」というシェフもいれば、「お客様がそのシーズンによってどういうものを求めているから、このようなスイーツで癒してあげたい」のように考えるシェフもいます。そういう想いが込められていることを積極的に発信しない方も多いので、それを私が伝えさせていただくことで、一人でも多くの人に「食べたい」と思ってもらえたり、食べて笑顔になっていただけたりしたら……と思っています。

 

 私の周囲にはあまり積極的に外へ出ない人が多くて、世の中的にもニートや引きこもりなど、社会との関わりを自ら絶ってしまうような人たちがいらっしゃいますよね。そういう人たちが、私の発信するスイーツの写真や文章に触れたことで、「じゃあ、ちょっと外に出てみようかな」という一歩を踏み出すきっかけになれば、という想いがあるんです。私自身が積極的に外へ出ていくタイプなので、人よりも多く情報をキャッチして、見て触れたものを、少しでも多くお伝えしていくことが使命かな、と思っています。

 

Q:ブログなどの情報を発信することを通して、一番嬉しかったのは?
あまり旅行などへ出かけない友人が、私のブログを見て「ちょっと、あのスイーツを食べてみたくなったから、東京へ行って来ようかな」と言ってくれたんです。後日「どうだった?」と尋ねたら、「すごく美味しかった」と。しかも、友人が観光客だと気づいて話しかけてくれたシェフもいたようで、お店に行くだけではなくシェフと直接話せたと聞いて、すごく嬉しく思いました。自分が食べて感じた美味しさや喜びを、私の知らないところで共有してくださる人がいると思うと、それってすごいことだなと。

 

Q:日々大切にしていることは、どんなことですか?
いかに楽しんで生きるか。人生は1回しかないので。ダイエットをしたり、甘いものを食べることで太るのを気にしたりする女性が多いじゃないですか。私はスイーツコンシェルジュの資格を取ってから体重が20キロ以上増えましたけど、特に後悔しているわけではありません。それ以上に喜びや楽しみ、出会いやご縁など、経験値が得られる喜びの方がはるかに上回っているんです。だから、スイーツの個数やカロリーを気にしなくなってからは、体重が減ることはないにせよ、それ以上増えることもなくなったんですね。だから、本当に楽しんで食べれば、それだけでエネルギーになるのかな、と思っています。

 

 Q:佐藤さんのライフスタイルの中で、「食」とはどういったものですか?

「喜び」ですね。特にスイーツは欠かせないもの、としか言いようがないのですが、美味しそうな料理を見たときと、美味しそうなスイーツを見た時の笑顔って違うと思んですね。すごく華やかで芸術的に盛り付けられたお皿もたくさんありますが、スイーツに対して「わぁ!」っと思わずこぼれてしまう笑みは特別だと思っています。楽しんで生きて行く中では大切なんじゃないかなって。

 

Q:教訓にしているような経験はありますか?
現代は情報化社会と言われていますが、口コミや星での評価を参考にしてお店へ伺ってみると「え?みなさん本当にそう思ってるの?」ということが多々あります。人それぞれ味覚は違うし、日頃の食生活によっても関東の方には薄味に感じたり、名古屋だったら味噌の濃さや辛めの味が好きだったり、関西にも関西のダシの濃さというものがありますよね。それで星を決めるものじゃないって私は思うので、ブログなどで紹介するときに気をつけているのは、「これが美味しい」と断言するのではなくて、素材や技法による「味」を伝えることに徹しています。自分の主観よりも、客観的に見ることを大切にしているとも言えます。私が初めて行くお店の情報を事前に入れないのには、そんな理由もあるんです。

 

Q:これまでの出会いの中で、思い出深いのは誰との出会いですか?
名古屋の「シェ・シバタ」の柴田シェフです。でも最初はイメージが悪かったんですよ。催事で見かけると、いつも奇麗な女性がそばにいる印象があって、チャラい方なんだろうなと(笑)。でも、通常のお店を回しながら催事ブースにも毎日立たれていて。私はチョコレートと言えば海外のものにしか興味がなかったので、毎日通っているけれど柴田さんのブースの前はスルーしていたんです。ところが、毎日私の姿を見かけるものだから、シェフのほうから「同業?」と声をかけてくださったんです。「今日はこのお店のショコラを買いに来ました」という感じで会話をする中で、「うちの店に来たことある?スイーツを食べたことはある?」と聞かれたので「ないです」と答えたら、「だったら来てよ」と言われまして。後日お店に伺ったところ、シェフが私に気づいて厨房から出てきて、私が食べているスイーツについて説明をしてくださいました。その後Facebookでもつながり、シェフがスイーツの歴史やパティシエ業界について熱く語っている書き込みを見たことで、よりスイーツの世界に興味を持つきっかけになりました。ジャーナリストをやろうと思ったときから、特定の方に肩入れはしないようにと気をつけていますが、スイーツの世界を知るきっかけをくれた方として、柴田シェフを尊敬していますね。

 

Q:これからの夢や目標はありますか?
同じくippinのキュレーターとしても活躍されている、フランス菓子・料理研究家の大森由紀子さん、スイーツコーディネーターの松本由紀子さんなど、先輩方がされてきたことを勉強しながら、名古屋という利点を活かして東京、名古屋、関西の幅広い地域のスイーツを発信したいです。日本の方たちだけではなく、日本のスイーツの素晴らしさを世界の方たちにも伝えられる存在になるのが理想ですね。それと、本を出してみたいという希望もあります。シェフが伝えたいと思っていることをいかに盛り込めるか。コンセプトとしては、乗り換えなくても行けるスイーツ店を路線別に紹介して、歩きながら楽しめるマップ機能も備えたものを考えています。ユーザー目線に立って、読者の方が一歩を踏み出しやすい本にしたいです。あとはやはり、パティシエ業界やスイーツ業界をまとめて盛り上げていけるような存在になりたいな、と思っています。

【クローズアップ】スイーツに込められたシェフの想いをしっかり届けたい 佐藤ひと美
【クローズアップ】スイーツに込められたシェフの想いをしっかり届けたい 佐藤ひと美

トリュフ プレーン 12粒入(3,591円)


佐藤さんが高級ショコラの魅力にとりつかれるきっかけとなったトリュフ。カカオそのものの風味と、濃厚なのにすっと溶け入るような口どけがお気に入り。

【クローズアップ】スイーツに込められたシェフの想いをしっかり届けたい 佐藤ひと美

アイスクリーム&ソルベ盛り合わせ フランボワーズ&ショコラ(1,296円)


佐藤さんが「ラ・メゾン・デュ・ショコラ」を訪れ、イートインするときに欠かさずオーダーするというお気に入りの一品。

 

【取材協力】
ラ・メゾン・デュ・ショコラ 青山店
東京都港区北青山3-10-8
TEL: 03-3499-2168
ぐるなびページ
http://r.gnavi.co.jp/53rxv5gy0000/
公式サイト
http://www.lamaisonduchocolat.co.jp/

 

【プロフィール】

日本スイーツ協会「スイーツコンシェルジュ アドバンス」認定者。webサイトを利用したスイーツライターとして、各地方のスイーツ、グルメ(レストランデセール)など、スイーツにまつわる幅広い情報を発信。あまり知られていないスイーツ由来や歴史、シェフの想いを広く伝えるべく執筆活動を展開中。スイーツの中でもショコラをこよなく愛し、毎日2~3ブランドのチョコレートを口にするチョコホリックな一面も。日々ショコラ、スイーツ、グルメを探し求め、名古屋を拠点に東京、関西へも頻繁に足を延ばすフットワークの軽さが自慢。今まで訪れたパティスリー、ショコラトリーは幅広く、1000ブランド以上を訪問し、3000ブランド以上を食べてきたスイーツの魅力を日々ブログにて発信している。

http://sweets1437.exblog.jp/

※掲載情報は 2016/05/11 時点のものとなります。

  • 7
ブックマーク
-
ブックマーク
-
この記事が気に入ったらチェック!
【クローズアップ】スイーツに込められたシェフの想いをしっかり届けたい 佐藤ひと美
ippin情報をお届けします!
Twitterをフォローする
Instagramをフォローする
Instagram
Instagram

キュレーター情報

ippin編集部のお取り寄せ

ippin編集部のお取り寄せ

"あの人の「美味しい」に出会う"ippinの編集部おすすめのおとりよせ情報を配信中。
全国の厳選されたグルメ・食品、レストランメニューをお取り寄せできるショッピングサイト「ぐるすぐり」のおすすめから、心惹かれるグルメをピックアップしご紹介しています。

次へ

前へ