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ソースはお酢なんです
「ソースはお酢なんですよね」と鳥居大資さん。
醤油は塩味とうま味を添えるもので、ソースは酸味とうま味を添えるもの。そう考えるとソースの見方が変わってくるかもしれません。
打ち出の小槌とお稲荷さんに囲まれて
静岡県浜松市。大通りから小道に入ると「トリイソース直売所」と書かれた看板が出迎えてくれます。その横の工場の壁面にはシンボルマークの「打ち出の小槌」、そして、町内のお稲荷さんが並んでいます。
縁起のよい雰囲気を感じながら、目線を反対に向けると……
そこにはスタイリッシュな建物。トリイソースの直売店です。
ドアを開けるとさらにびっくり。
老舗のソース屋さんのイメージではないですね。木材の風合いと照明が綺麗にマッチしていて、商品がバランスよく綺麗にディスプレイされています。
お酢づくりから自社で手掛ける。
ソースに欠かせない原材料の一つが酢。これも自社で仕込んでいます。
そして、果実酢も同時並行でつくっていて、ちょうど梨を使った酢が仕込まれていました。果実に含まれている糖をアルコールにして、そのアルコールを酢酸発酵させて酢にしていきます。
ソースに使う酢も製造方法は同様で、地元の酒蔵の吟醸酒の酒粕を元にしてアルコールを抽出し、酢酸菌を繁殖させて2ヵ月かけて酢にしていきます。それを保管容器に移して寝かせておき、必要に応じて使っていきます。
広がるソースの香りと、野菜を刻む音。
ソースの製法は、
1)野菜を煮混んでミキサーでペースト状にする
2)酢、塩、砂糖、香辛料などで味付け
3)容器に移して熟成
4)ビン詰めをして完成
作業場に入ると、ソースのよい香りがふわ~と広がります。
そして、トントントンという音が……
この日も地元の生産者さんがつくるニンジンが包丁で刻まれていました。
使われる野菜は国産であることは大前提で、出来る限りの地産地消のものをと心がけているそうです。また、砂糖も鹿児島の種子島産粗糖(そとう)を使用。これらの情報はトリイソースのホームページしっかりと表記されています。
最適温度が異なる酢と香辛料。
ソースは野菜を煮込んでつくっていきますが、高温でドロドロと煮込めばよいかというと、そうではないそうです。特に酢は高温になればどんどん揮発してしまいますが、低温すぎると香辛料がうまく馴染んでいかないのです。最適温度が異なる原材料同士のベストな関係を導いていくのが難しいわけです。
さらには、一言で香辛料といっても唐辛子や胡椒のように熱に比較的強いものもあればそうでないものもあるので、温度と入れるタイミングが大切なのだそうです。そこで香辛料を煮出す方式をとっています。
香辛料を袋にいれて漬け込むイメージなのですが、「急須でいれたお茶と粉茶をイメージしていただくと分かりやすいと思います。急須のお茶はインパクトは少ないけど、すーっと入ってくる。粉茶は味がストレートだけど苦味も残る」と鳥居さん。
ソースづくりに桶が使われている
ここで登場するのが桶です。醤油では仕込みに使われる桶ですが、ソース屋さんでお目にかかれるとは……という驚きです。
出来上がったソースは一度この桶の中に入れられます。そして、瓶詰めされる分だけが再び引き出されます。つまり、継ぎ足しソースのような感覚で、新たに注がれてから出ていくまでに平均すると2か月くらいをこの中で過ごしているそうです。味の均一化と代々のうま味が凝縮されていく熟成の時を過ごすのです。
さらには新桶も並んでいます。プラスチック製のタンクよりもコストはかかりますが、「やっぱり木桶がいいんだよね」というスタンスが素敵です。
充填も手作業で丁寧に行われてようやく完成です。
※掲載情報は 2015/10/20 時点のものとなります。
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キュレーター情報
職人醤油 代表
高橋万太郎
1980年群馬県前橋市出身。立命館大学卒業後、(株)キーエンスにて精密光学機器の営業に従事し、2006年退職。(株)伝統デザイン工房を設立し、これまでとは180度転換した伝統産業や地域産業に身を投じる。現在は一升瓶での販売が一般的だった蔵元仕込みの醤油を100ml入りの小瓶で販売する「職人醤油」を主宰。これまでに全国の300以上の醤油蔵を訪問した。