お茶の水女子大学Ochasと不二家コラボ商品「2層の贅沢バウム」に込められた想い

お茶の水女子大学Ochasと不二家コラボ商品「2層の贅沢バウム」に込められた想い

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お茶の水女子大学Ochasと不二家コラボ商品「2層の贅沢バウム」に込められた想い

皆さん「産学連携」という言葉をご存知でしょうか?これは、企業(産)と、大学等(学)が連携して、新製品開発や新事業創出を図ることを指す言葉です。今回お茶の水女子大学(学)と不二家(産)が文京区(東京都)の繋ぎあわせで作り上げた新商品「2層の贅沢バウム~お茶の水仕立て~」製作秘話をご紹介します。

 

今回の話の中心はお茶の水女子大学学生サークルの「Ochas(オチャス)」。

 

「Ochas」は今年10年目を迎えるサークルで、当初は食物栄養学科の学生を中心として組織され、授業で学んだものを実践で活かしたいという想いで活動を開始しました。サークルの名前はもちろん「お茶の水女子大学」という学校の名前から起因しています。活動の目的としては、「食べる」という行動を多面的に捉えて「食の四次機能」を伝えるということを行っていて、現在は120名を越える人数が、このOchasに所属しています。

食の四次機能とは

お茶の水女子大学Ochasと不二家コラボ商品「2層の贅沢バウム」に込められた想い

Ochas おみやげチーム元リーダー お茶の水女子大学 生活科学部食物栄養学科4年 金成はるなさん

 

「Ochas」が提唱する食の四次機能は下記のとおり。
一次機能:栄養学的機能 栄養素を体に取り入れる
二次機能:おいしさの機能 嗜好機能とも言われ、美味しく食べる取り入れる
三次機能:生体調節機能 健康を維持・増進するために取り入れる
四次機能:食べる幸せ 心理機能とも言え、誰かと食べる、作り手を思って食べる

 

特にこの4番目にある食の四次機能はOchasが創った言葉で、皆で美味しいものを食べた時に感じる「幸せ」を届け、拡げるということを念頭に置いて活動をしています。Ochasは、120名を超える大所帯ですが、下記7チームに分かれていて、各メンバーは専属で所属したり、複数チームを掛け持ちしたりすることもあります。

1:「お茶作りチーム」:鹿児島県の株式会社下堂園と一緒に毎年新しい「レシピ茶」を作り販売を行う。
2:「インターナショナルチーム」:学食でTFTメニュー(Table For Two)開発や、世界の料理を作り、実際食べる経験もする。
3:「ファームチーム」:大学内の畑で野菜や果実ジュースを作ったり、農場・牧場見学を行ったりする。
4:「食プレチーム」:食に関する知識とプレゼンテーション能力の向上を目的として、栄養や食文化に関することを、Ochasメンバーにプレゼンテーションを行う。
5:「スイーツチーム」:野菜やヘルシーな食材を使って一工夫したスイーツのレシピを作成し、カフェとコラボをしてメニュー開発などを行う。
6:「ナーサリーチーム」:お茶の水女子大学キャンパス内にある附属保育所「いずみナーサリー」で保育ボランティアや、子供が安心して食べられるおやつを開発する。
7:「おみやげチーム」:主に学園祭で販売する商品の開発をするために、一から意見を出し合い、試作会を重ね、メニューの候補を出して、地元のお菓子屋さんに製造を依頼。包装なども自分たちで考え、商品開発を行う。

今回の「2層の贅沢バウム~お茶の水仕立て~」はこの「おみやげチーム」で創り上げた商品です。

 

あくまで独自の路線、手探りでの開始

お茶の水女子大学Ochasと不二家コラボ商品「2層の贅沢バウム」に込められた想い

Ochasメンバー お茶の水女子大学 生活科学部食物栄養学科4年 畠中由衣さん

 

大学の研究室と企業がコラボをして商品開発をするという話は聞きますが、大学の一サークルと企業がコラボをして商品開発をするという話はあまり聞きません。Ochasメンバーもどこかの団体を参考にするというわけではなく、あくまで独自に全てを考えていったようです。おみやげチーム元リーダーの金成さんは、自身がリーダーになった際に、今まであるものを成熟させていくことも大事だが、新しいものにも挑戦してそれを形にすることを自身の目標に置き、このプロジェクトをスタートさせました。参考にするべきものが無い状態でのスタートはまさに「手探り状態」とも言え、メンバーの結束が無ければ創り上げることはできなかったと語ります。

 

全てはコンセプトシートから

お茶の水女子大学Ochasと不二家コラボ商品「2層の贅沢バウム」に込められた想い

Ochasメンバー お茶の水女子大学 生活科学部食物栄養学科2年 須澤理惠さん

 

Ochasの歴史で商品開発を行ったのは、実は初めてではありません。金成さん、畠中さんが1年生の時に実は文京区の和菓子屋さんで商品開発を行っています。ただ、作成までの工程や、実際のレシピ等残っているものが無く、商品開発を行ったという現実だけがありました。Ochasの今後を想い、金成さんはまず「コンセプトシート」を作ることから着手します。これによって、それぞれの商品比較ができるようになったのと、商品開発へのファーストステップでもある、まず何を考えて考案すれば良いかのきっかけになったと金成さんは語ります。コンセプトシートは、「商品名」「コンセプト、テーマ」「ターゲット」「デザインイメージ」「アピールポイント」に項目が分かれています。

 

おみやげチーム40名を3~4名ずつのグループに分けて、3商品ずつコンセプトシートを完成させ、プレゼンを行い、それぞれの観点で投票を行い6つの商品に選定を行いました。その6商品から選ばれたのが、この「2層の贅沢バウム~お茶の水仕立て~」です。

 

簡単ではなかった商品開発

お茶の水女子大学Ochasと不二家コラボ商品「2層の贅沢バウム」に込められた想い

Ochasメンバー お茶の水女子大学 生活科学部食物栄養学科2年 小鳥井あおいさん


想定はしていたものの、やはり簡単に商品開発が成功したというわけではなく、まず壁になったのが、自分たちのイメージと、出来上がってきたサンプルの差。今回特に重要視していたのが、お茶の花の白いイメージでした。元々「お茶花バウム」という商品名で考えていたこともあり、この白さをどこまで出せるか、表現できるかが大きなこだわりでした。味の部分はもちろんですが、バウムクーヘンの白い層を2つ増やして、黄色の層を2つ減らすといった要望も不二家に伝えて、幾度となく商品サンプルの作成、問題点提起を行ったといいます。妥協する部分も必要ですが、意識していたのはできるだけ明確に不二家に伝えるということでした。必ず不二家に出向いて、自分たちの想いをしっかり伝えました。

 

 

熱意と支えがあってこその商品

お茶の水女子大学Ochasと不二家コラボ商品「2層の贅沢バウム」に込められた想い

以前にも現メンバーで商品開発を行いましたが、残念ながら完成まで至らなかった経緯があります。今回成功した理由の一つは、「協力と熱意」でした。文京区の担当者は夏の暑い時期にOchasと一緒に、商品開発に協力してくれる箇所に訪問をしてくれたそうです。不二家に関しては、Ochasの学生らしい意見に、しっかりと耳を傾け、彼女たちのイメージに近づけるよう尽力を惜しまず、日を越した時間帯にでもメールでのやりとりを行い、Ochasメンバーは、この熱意に感激したそうです。

 

 

実際に完成し、販売を行って

お茶の水女子大学Ochasと不二家コラボ商品「2層の贅沢バウム」に込められた想い

「11月の学園祭で販売する」これがOchasの中での一つのゴールでした。前日に商品がダンボールに入った状態で手元に届き、それを開けた瞬間にようやく大きな安堵と喜びが溢れ、まさに可愛いわが子の様な、この商品を慈しむ気持ちになったそうです。

 

事前に予約をとり販売数を予想して発注しましたが、結果2日間開催された学園祭の初日開始30分で全て売り切れになってしまうという事態になりました。予想以上の反響で、一からの商品開発、そして販売まで行ったOchasメンバーは相当な手ごたえと、自信を感じたようです。

 

企業として地域に根ざすという選択

お茶の水女子大学Ochasと不二家コラボ商品「2層の贅沢バウム」に込められた想い
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お茶の水女子大学Ochasと不二家コラボ商品「2層の贅沢バウム」に込められた想い

お茶の水女子大学から徒歩5分程の所に不二家のニューコンセプト店舗「OTOWA FUJIYA」があります。「不二家」でイメージする店舗造りとは一線を画しており、店内は多くの花で溢れ、落ち着いた印象。店内にはテーブルと椅子も配置されており、お茶を楽しむこともできます。「OTOWA FUJIYA」は2013年にコンセプト設計が行われ、2014年にオープンをしました。ここで、Ochasと共同開発をした「2層の贅沢バウム~お茶の水仕立て~」は販売されています。

 

お茶の水女子大学Ochasと不二家コラボ商品「2層の贅沢バウム」に込められた想い

株式会社不二家 洋菓子事業本部 営業本部 営業企画部 商品課 佐野友美さん

 

学生とのコラボは、実は初めてだったという不二家にとっても、今回のプロジェクトは様々な挑戦だったそうです。

 

きっかけは、文京区からの声掛けでした。文京エリア内のスイーツショップと大学とのコラボの話、つまり「産学連携」の話を持ちかけられたことからのスタートでした。まずは、エントリーからということで、不二家と組むことによってどれだけメリットがあるかを、Ochasにプレゼンを行いました。その結果、7店舗の中から不二家が採用となり、そこから商品開発がスタートしました。

 

お茶の水女子大学Ochasと不二家コラボ商品「2層の贅沢バウム」に込められた想い

実は佐野さんは、お茶の水女子大学卒業生。そんな縁もあり、今回の商品企画担当に任命されました。


当時、不二家は「OTOWA FUJIYA」という新しいコンセプトショップを立ち上げたばかりでした。OTOWAは、「音羽」、不二家本社でもあり、このコンセプトショップがある地域の名前です。「地域に愛される店にする」、この言葉が至上命題でした。チェーン店の一店舗ではなく、不二家の新しい顔になるようなコンセプトを打ち出していく、その答えの一つが「OTOWA FUJIYA」でした。そこで、今回の文京区からの話が来たときに、不二家(企業)としてぜひ取り組みたい、さらに、コラボ商品を地域に根ざしたお店「OTOWA FUJIYA」で販売したいと考えたそうです。もちろん、不二家上層部もこの想いは同様でした。通常は、工場で大量生産するところですが、今回のプロジェクトでは、少ない生産ロットにすることもいとわず、地域の取り組みを成功させようということで、非常にスムーズに社内調整もできたそうです。


通常商品開発は時間がかかるもので、3ヶ月間という短い期間で完成させていくというのはなかなかの挑戦だったようです。一番苦労した部分は、やはり商品開発に携わった経験が少ない学生が持っている商品の「イメージ」を形にし、実際に販売できる商品に仕立て上げていく部分。コスト面等を考慮して、現実的な着地点へ導いていく過程に相当な力と神経を使ったようです。パッケージデザインも、Ochasが思い描くイメージの色合いから、実現可能な所に落とし込みをし、Ochasのイメージを壊すことなく、そして納得できる説明をしました。この商品のパッケージデザインのイメージデザインは、通常商品のデザインイメージより多く作ったそうです。佐野さんがそこまで力を入れて取り組んだのは、Ochasメンバーの熱意に相当感化されたことも理由だそうです。

 

実際販売を行って

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お茶の水女子大学の学園祭終了翌日から「OTOWA FUJIYA」でも販売を開始しましたが、予想以上の反応がありました。学園祭で購入できなかったお客様や、常連客の方も興味を持って購入し、「OTOWA FUJIYA」ならではの商品として手土産で利用される方も多かったようです。

 

やっぱりやって良かったと、佐野さんは当時を振り返りながら語ります。自身の母校でもあるので、その後輩達と一つの商品を作っていく過程は感動を覚え、学生たちの前向きな意見に色々と気づくこともあったようです。佐野さんの願いは、彼女たちがこの経験を糧にして、不二家とは言わずとも、商品開発の世界に飛び立っていくこと。様々な問題もありましたが、結果大きな満足感をこのプロジェクトはもたらしたようです。

商品開発を終えて彼女たちに見えてきたもの

お茶の水女子大学Ochasと不二家コラボ商品「2層の贅沢バウム」に込められた想い

不二家にも良い影響を与えた今回のプロジェクト、もちろんOchas各メンバーにも大きな影響を与えたようです。まだOchasに残るメンバーは、新しい商品開発を模索する毎日を送っており、またあの達成感を今度は自分たちが先輩となり引っ張って行きたいと目を輝かせます。来年卒業を迎える4年生も、やはり「食」という世界で、自分を試して行きたいと曇りのない、そして迷いの無い目で語ります。


大学という場所は、漫然と過ごしてしまう学生もいますが、彼女たちはこのプロジェクトを通じて多くのこと、そして大事なことを学びました。彼女たちが口をそろえて言葉にしたのは「感謝」の言葉。


文京区の担当者、不二家の担当者、大学関係者。自分たちの力だけでは、一つの商品を作り上げることは難しいことです。ただ、多くの人達の協力を得ることができれば、自分たちが想像していた以上のものができますが、協力を得るためには、真剣に、熱意を持ってその人に話さなくてはいけません。考えると当然のこと、ただ実践する場合、実は難しい事です。この経験を大学生というこの時期に経験できたことは、何にも代えがたいもの。彼女たちのこの経験は、きっと後輩に引き継がれるでしょう。そして、彼女たちは、また新しいステージでも何かを成し遂げるのだろうと強く感じました。

 

※掲載情報は 2015/06/29 時点のものとなります。

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