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大豆が織りなす正三角形〜一粒にこめた職人技とプライド
経木（きょうぎ）に包まれた納豆なのです。経木とは、木を薄く削ってできた紙状の板のことで、その昔、お経を書いたことから経木と呼ばれるようになったそう。今でも高級な寿司ネタを包んだり、小さくカットしたものが豚まんの底に敷かれたりしている、あれです。経木にくるまれた包みを開いていくと、芸術的に頂点のとがった正三角形の納豆が現れます。
納豆の粒が織りなす正三角形。発酵前の煮豆を経木に盛り込むとき、3つの角に豆が行き渡るよう手作業で詰めているのです。「コンピューターよりも緻密で完璧な仕上がりこそ日本の職人技。」昭和38年創業の下仁田納豆。二代目の南都隆道社長が家業を引き継いで間もない頃、師と仰ぐ経営者から言われた教えを守り続けています。「豆腐に角があるように、納豆にも角がなくては。」下仁田納豆のプライドです。たしかにプライドはとんがっていなくては。さっそく頂きましょう。
南都社長いわく、「納豆はとにかく混ぜ方が決め手です。下仁田納豆は、右に51回、左に15回、それから右に5回。これを3セット繰り返します」。
食通で知られた魯山人は400回混ぜたという逸話がありますが、「右51、左15、右5」とはこれまた細かな数字です。3セット繰り返すと合計213回になりますが、して、その根拠は？「祖父の代からの家訓ですのでいわれはわかりませんが、とにかく右に51回からです。あ、南半球に行ったら逆回転ですよ。」根拠は得られませんでしたが、南都社長がおもしろい人だと言うことはよくわかりました。さあ、言われた通りに混ぜねば。右51回転から左回転に移行せねばねば。ふっくら空気を含ませねばねばねば。お醤油は、食べる直前にかけねば！先にかけてしまうと粘りが出ねば。そろそろやめねば〜。
下仁田納豆「ちいさなしもにた」にタレやカラシは付いていません。毎日の体調やお好みで醤油を加減してもらうため、あえて添えない方針です。
びよ〜んと糸を引く納豆を、ごはんの上に乗せました。矢も楯もたまらず反射的にかきこみます。ぶわぁぁーーーっ。ずるずるるるーー。大豆の旨味ぎゅぎゅぎゅ、納豆菌の粘りとコク、うう〜〜んごはんと納豆の究極のマリアージュに、たらした醤油と細かく刻んだ万能ねぎが加わって互いのよさを引き出し合い、史上最強仲良し家族大集合〜。一度食べだすとお茶碗が空っぽになるまで、箸は置けませんでした。
納豆のおいしさは9割が素材。大豆はすべて国産。品種や収穫時期によって、地元群馬のほか北海道などの生産者と契約しています。ほどよい保湿性と通気性で呼吸する経木には、松脂の天然の旨味成分と抗菌作用があり、納豆の鮮度を保ちます。南都者長は語ってくれました。
「経木はすべて地元、榛名山の赤松のものを使っています。先祖代々のご縁でこうして下仁田納豆が続いているのですから、納豆づくりを通して、日本の農業、林業を支えていくことが私たちの使命です。」毎朝手作りのできたてを「なっとう〜、なっとう〜」と引き売りしていた父の代から変わらぬ志しと製法で、今や取り扱うデパートやスーパーは1,500店舗、商品も「ちいさなしもにた」他、大粒、小粒、黒豆など18種類に上ります。肌さわりのよい経木の包みを開いて出て来た納豆が本当に正三角形かどうか、あなたも試せばなっと〜く〜。
※掲載情報は 2015/06/10 時点のものとなります。
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キュレーター情報
ベジアナ・農業ジャーナリスト
小谷あゆみ
※東京世田谷のベランダ菜園で野菜をつくるアナウンサー・ベジアナです。
もしも日本中のベランダでみんなが１つでも野菜をつくったら、暮らしが楽しく豊かになるに違いありません。
レストランの有名シェフをリスペクトするように、全国にあるおいしい農畜産物とそれを生み出す生産者や農業そのものがリスペクトされる社会をめざして活動中。
「１億総プチ農家プロジェクト」を掲げて、小さな感動を発信しています。
おいしいものを食べる人も、つくる人も笑顔に。
農のある暮らし、都会のあなたのベランダからはじめてみませんか？
NHKＥテレ「ハートネットＴＶ 介護百人一首」出演中
NHKＥテレ「楽らくワンポイント介護」毎週（土）出演中
・農林水産省/ 食料農業農村政策審議会・畜産部会および医福食農連携プロジェクト選定委員
