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アル・ケッチァーノ奥田シェフの特別な塩
山形県庄内地方にあるイタリアン・レストラン「アル・ケッチァーノ」。ご存知の方も多いかと思いますが、シェフの奥田政行さんは、地産地消とかオーガニックという言葉が一般的になるずっと前から、店の半径30km以内でほとんどすべての食材を調達し、奥田さんにしかできない発想で料理をしてきた人です。
海と山に囲まれた豊かな土壌の庄内は、日本有数の食材の宝庫。在来野菜の多さでも知られています。早朝の庄内浜で魚を仕入れることから始まり、信頼できる生産者の畑や牧場をめぐり、時に野や山の草を味見しながら、奥田さんはその日の食材を調達していきます。地元の素晴らしい食材を紹介することで生産者を元気にし、過疎化が進んでいた庄内をよみがえらせて地方再建にも貢献してきました。そんな努力もあり、鶴岡市は今年ユネスコ創造都市ネットワークに認定されました。
際立つ素材の素晴らしさをより引き立てる奥田料理は、一見実にシンプル。だけど、決めてとなる塩にはとことんこだわります。それが、今回ご紹介する「月の雫の塩」。
魚料理にはその魚が泳いでいた海の塩が一番合うと奥田さんは言います。この塩は、庄内浜の魚をメインに使う奥田さんがそれに一番合う塩をと、地元の塩屋に特注したもの。満月の日の満潮の時には、月と太陽の引力で、ミネラル豊富な深海の水と対馬海流が混ざり合いながら岸に近づいてくるそうです。それを汲み上げて、ゆっくりと火入れして作られたのがこの塩。マグネシウムの苦み、カルシウムの甘み、カルシウムの酸味がバランス良く、魚にはもちろん、野菜も肉もより美味しくしてくれる塩です。
美味しい塩は世の中にたくさんありますが、この塩がすごいのは、舌の上に塩の味がいつまでも残らないこと。料理をきちんと引き締めながらも、食べたらすぐにすーっと塩味が消えていくんです。しょっぱさよりも旨味を感じるといった感じでしょうか。同じレシピでも、これを使えばグッと美味しくできあがり、いつの間にか料理の腕があがったような気にさせてくれる塩です。
※掲載情報は 2015/03/20 時点のものとなります。
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キュレーター情報
フードジャーナリスト
斎藤理子
雑誌編集者を経てロンドンに6年半、ワシントンD.Cに5年半在住。その間、世界各国を食べ歩く。現在は国内外の生産者からシェフまで幅広く取材し、雑誌を中心に執筆。著書に「イギリスを食べつくす」(主婦の友社)、「隣人たちのブリティッシュスタイル」(NHK出版)など。編著に『アル・ケッチァーノ』奥田政行シェフの連載をまとめた「田舎のリストランテ頑張る」(マガジンハウス)、「コッツゥオルズ」(ダイヤモンド社)。2011年英国政府観光庁メディアアワード受賞。