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暑くなると人気?!夏国カンボジアの人気鍋「チュナンダイ」
カンボジアでは、本格的な暑さのピークを日本よりも一足早く4月~5月に迎えます。最高気温は40度ほど。この時期の平均気温は35度前後となります。そんな暑さ厳しい季節、カンボジアでは暑さに負けないように、熱々の「鍋料理」を食べる習慣があります。夏の暑さを乗り切るには、汗をたくさんかきながら熱々の鍋を食べるのが良いとされているからです。
お肉と野菜たっぷりのカンボジア流鍋 (写真提供:古川沙樹氏)
「チュナンダイ」はカンボジア語で「土鍋」の意味。鍋の具材は野菜、肉、キノコ、揚げ湯葉、麺など様々なものがあり外国人旅行客にも人気ですが、特に暑い時期地元の人たちに好んで食べられるのが、鴨の血を固めた「血豆腐」が入った「鴨肉鍋」。体力を消耗しやすい暑い夏に「鉄分」を補給できるので、栄養補給になると人気なのです。
血豆腐の入ったカンボジア流鍋 (写真提供:チィム・ソペットラ氏)
鉄板を囲んでみんなでジュウジュウ! 肉と野菜をバランス良く
カンボジアには「肉」を食べて精をつけるという考えがあり、鍋とともに人気となるのが、半野外のレストランで老若男女が集まって楽しむ「鉄板焼」です。肉やホルモンをジンギスカンのように焼きながら食べますが、必ず一緒に添えるのが「ナス」「キュウリ」「青いトマト」「ハーブ」といった夏野菜です。肉やホルモンと一緒に新鮮な生野菜を腐乳(豆腐の発酵食品)とチリソースを混ぜて作るタレをつけて食べます。
ハーブたっぷりサラダ (写真提供:キムシアン・ピット氏)
このほかにも、レモングラスやミントなどと和えて作る「牛肉のサラダ」やバナナの花を使って、蒸した鶏むね肉と和える「バナナの花のサラダ」なども良く食べます。肉を食べてたんぱく質をしっかりととり、鉄分やカルシウムと言った暑い季節に必要な栄養素を取り入れることで、元気に夏を乗り切ります。
イカと青胡椒炒め (写真提供:古川沙樹氏)
また、カンボジアの特産物である胡椒もこの季節には欠かせません。海に近い地域では、肉ではなく海産物で同じくたんぱく質を補給します。胡椒は青い生のまま使用し、口いっぱいに広がる爽やかな香りを楽しみます。食欲を増進させ、栄養をたっぷり摂れます。
イカと丸ごとニンニクの青胡椒炒め (写真提供:古川沙樹氏)
夏バテ防止にはニンニク! 発汗作用が期待できるショウガも
生姜と鶏肉炒め (写真提供:水沼哲也氏)
カンボジア料理に多く使われるニンニクは特にこの季節、「夏バテ防止」のため意識して取り入れます。香りが立つように一度まな板でたたき、ザクザクと切って加えます。肉や野菜を使った炒め物には欠かせません。
また、汗をかいて体を冷やすということで、唐辛子や胡椒、また体を温めるショウガなども良く使います。積極的に汗をかくことで、体の熱を冷まし暑い夏を乗り切るということで、夏は特に香辛料を使った料理が人気となります。
番外編:夏にオススメ!カンボジアで人気のドリンク
タック・ドーン(ココナッツウォーター) (写真提供:島村絵美氏)
汗をかく季節には十分な水分補給が重要です。カンボジアには天然のスポーツドリンクとも言えるミネラルやビタミンが豊富なドリンクがあります。ひとつは「タック・ドーン(ココナッツウォーター)」です。発汗すると失われがちなカリウムをはじめ、カルシウムやマグネシウム、ナトリウムなどミネラルが豊富な上、ビタミンも含まれている自然の恵みたっぷりのドリンクです。
タック・アンパウ(サトウキビのジュース)を絞っている様子(写真提供:河村圭悟氏)
また、「タック・アンパウ(サトウキビのジュース)」も良く飲まれます。糖分豊富なので疲れを癒し、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどを補給できます。
カンボジアの夏を乗り切る「食の知恵」。暑いからこそ体を温め、たくさん汗をかく。エアコンに頼らず、体温を上げて免疫力を高めて、厳しい暑さを乗り切ってはいかがでしょうか?
カンボジア食卓の風景(写真提供:水沼哲也氏)
(取材協力・島村絵美氏)
※掲載情報は 2017/08/19 時点のものとなります。
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キュレーター情報
カンボジア王国大使館
カンボジアといえばアンコール・ワット、行ってみたい世界遺産第1位とも言われています。でもそれ以外のカンボジア、特に食に関してはあまり日本では知られていません。西はタイ、北はラオス、東はベトナムと接していて気候もよく似ていますが、食文化にはカンボジアならではの特徴があります。カンボジアの食とは何か。一言で言うとたっぷりのハーブと魚を発酵させて作った「プラホック」です。何種類もの香草を生で齧ることも地元の人たちは楽しんでいますが、石臼ですりつぶしたそれらを他の食材と混ぜて調理して風味と旨味を溶け込ませています。クメール料理はほんのり甘くて酸っぱい、そして辛くないのです。野菜、肉、魚、米、どれも素材の味を引き立てる優しい味のスローフード、のんびり大らかな国民性をよく表しています。水と緑が豊かな地で、雨と太陽の恵みが交互に来る常夏。ゆえに南国の甘くてみずみずしい果物も1年中楽しませてくれます。成長早い首都プノンペンでは、フレンチや和の食材と融合させた創作クメール料理も流行しています。古き良き伝統も、新しく洗練されたニュージェネレーションもうまく融合しているのがカンボジアなのです。ぜひご賞味を。