“パン生地と同じように発酵させた”モチモチしたドーナツ

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住宅街の隠れ家ドーナツ屋さん

“パン生地と同じように発酵させた”モチモチしたドーナツ

2年前に事務所を表参道から代々木上原に引っ越しました。前の場所に比べてランチできる手頃な店が多いのです。ランチの後におやつに食べようと近所のドーナツ屋さん「haritts(ハリッツ)」でドーナツを買っているのです。

 

今回のお薦めはドーナツですが、手元にある『お菓子の由来物語』(猫井登 著・玄冬社)の“ドーナツの項”をひも解くと、由来は諸説ありと。17世紀のオランダで作られたくるみを生地の真ん中にのせたオランダの揚げ菓子「オリーボル」が原型とか。ドーナツの語源はdoughnutを分解するとdough(生地)+nut(木の実・ナッツ)なのですが、ドーナツには木の実が無い!?一説によると「オリーボル」を作るはずが、胡桃が手に入らなかったから真ん中に穴を開けて揚げたというのです。長崎経由でオランダのオリーボルが日本に入ってもよさそうなのですが、カステラと違いこちらは不明なのです。ただ、オランダの移民がアメリカに渡り発展したと言う説からインディアンの矢が真ん中に辺り空洞になったなどドーナツに関しては山ほどの“真実”があるのです。

“パン生地と同じように発酵させた”モチモチしたドーナツ

記憶に残るドーナツは、母親が小麦粉を練ってドーナツ状に油で揚げてから、粉糖が無いので普通の砂糖をかけたものをおやつでよく食べさせられていました。今思うと高温で揚げているせいか、どちらかと言うと硬い油菓子のようなものでした。1971年に日本にミスタードーナツとダンキンドーナツがチェーンとして本格的に進出し始めたのです。74年頃にデザイン事務所で働くようになったのですが、郊外の私鉄の駅のそばに有ったドーナツチェーン店で毎朝ドーナツ1個とコーヒーを飲んで出かけていました。そこにはスタンプカードがあり、確かスタンプを10個貯めて、ばかに重たいコーヒーマグを貰いました。ファーストフード店が多く開店して、ドーナツやハンバーガー、フライドチキンを食べるのがオシャレな時代の到来でした。しかし、今考えるとちょっと恥ずかしい話ですね。

 

最近はハンバーグもフライドチキンも食べませんがドーナツだけは別腹です。元々この手の菓子には穴は空いていません。このドーナツの誕生により、真ん中が空洞の事を“ドーナツ化”とか“ドーナツ現象”と呼ぶ様になったのですが、他のこんな事例はないですね。“ミルフィーユ化”とか“バームクーヘン化”なんて言葉も無いし、また、この数年コンビニエンスストアーでも“ドーナツ競争”が激化したのも話題になりました。そしてドーナツの専門店もずいぶん増えてドーナツ業界は大変な戦国時代とも言えますね。

“パン生地と同じように発酵させた”モチモチしたドーナツ

代々木上原の“ハリッツ”ですが、前身は移動式カフェとして2004年9月に誕生したのだそうです。そして、2006年4月に一軒家の古民家を改造して店舗として生まれ変わり、コーヒーとドーナツをメインに製造・販売する店になったのです。代々木上原駅から井の頭通りに行く坂道を登り、右手の住宅地の中にあるのですが、小さなプレートと濃紺のパラソルが目印です。木の引き戸を開けて上に上がりますが、ここは昔、玄関の三和土だったのでしょう。入口のショーケースが置かれて奥に工房があり、左手はカフェスペースになっています。ドーナツのメニューは、プレーン、シナモン、クリームチーズ、ビター85、かぼちゃ、ごまあん、アールグレー、きなこ、抹茶、アップルシナモン・・・と20種類ほどあります。食感はそう言えばいいのでしょうか。サクッとか、カリッとかではなく、しっとりとしてモチッとしているのです。ある意味で柔らかいのですが、噛みごたえがあるのです。

 

ドーナツと言えばリング状ですが穴が見えないくらいふんわりもっちりと膨らんでいるのです。パンと同じ様に生地を発酵させているので、アメリカンタイプの固いドーナツとは全く別ものです。湿度や気温などによって発酵の違いが出るので、発酵時間や生地の分量を調整して常にふわふわもっちりとした食感になる様にしているのだそうです。そして保存料も使っていないので、生ドーナツと呼んでもおかしくはないです。時間帯によってはお客さんが並んでいて品切れになりますが、ファンの人は揚げたてを待っているのです。街の本当に小さな、小さなドーナツ屋さんですが、味覚的に非常に高い評価の店なのです。

 

代々木上原に散歩がてらに来てみませんか。

“パン生地と同じように発酵させた”モチモチしたドーナツ

※掲載情報は 2017/02/10 時点のものとなります。

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キュレーター情報

後藤晴彦(お手伝いハルコ)

アートディレクター・食文化研究家

後藤晴彦(お手伝いハルコ)

後藤晴彦は、ある時に料理に目覚め、料理の修業をはじめたのである。妻のことを“オクサマ”とお呼びし、自身はお手伝いハルコと自称して、毎日料理作りに励んでいる。
本業は出版関連の雑誌・ムック・書籍の企画編集デザイン制作のアート・ディレクションから、企業のコンサルタントとして、商品開発からマーケティング、販促までプロデュースを手がける。お手伝いハルコのキャラクタ-で『料理王国』『日経おとなのOFF』で連載をし、『包丁の使い方とカッティング』、『街場の料理の鉄人』、『一流料理人に学ぶ懐かしごはん』などを著す。電子書籍『お手伝いハルコの料理修行』がBookLiveから配信。
調理器具から食品開発のアドバイザーや岩手県の産業創造アドバイザーに就任し、岩手県の食を中心とした復興支援のお手伝いもしている。

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