食材に簡単に冷燻フレーバーが楽しめるアンダルシアのオリーブオイル

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冷燻オリーブオイルでオリジナル料理が出来る!!

食材に簡単に冷燻フレーバーが楽しめるアンダルシアのオリーブオイル

20数年前にNHKのこども向けの番組『ひとりでできるもん!』という月刊誌の制作をしていました。現在は「NHK Eテレ」ですが、その頃は「NHK教育テレビジョン」の時代です。子どもが身の回りのことを「ひとりでできるもん!」というスタンスで構成するのですが、その中の目玉は料理なのです。月一回NHKの番組担当プロデューサー、ディレクターに版元のNHK出版、編プロと誌面のアートディレクターをしていた私と会議をしていたのです。子ども向けのレシピということで、簡単で作れることが条件でしたが、レシピは専門の料理研究家が担当し食材の選定にはかなりうるさい方々が多かったのです。その中の調味料のひとつに“油”をどうするかという問題がありました。それまで、イタリア料理でパスタを作る時も油は“サラダ油”を使い、表記もそれに準じていたのです。それが、サラダ油ではなく「オリーブオイル」にしたいというのです。番組の性格上、全国どこでも入手できるものという条件があったのですが、丁度時代はイタリア料理ブームがはじまっていたのです。色々あって、サラダ油はオリーブオイルになってのですが、この番組は人気が高く、日本でオリーブオイルの認知度があがったのは「ひとりでできるもん!」のおかげとも言われているのです。日本の食卓に当たり前のように、オリーブオイルが登場してきたのは四半世紀なのです。

食材に簡単に冷燻フレーバーが楽しめるアンダルシアのオリーブオイル

話はそこから10年ほど経過した時代です。イタリアンレストランでは、バターの変わりにオリーブオイルが出て来て、パンに浸して食べるのが流行っていたのです。その際に、オリーブオイルがパンにつき過ぎて、切れが悪いと感じていたのです。その頃、有田焼の窯元さんのコンサルタントをしており、折角ならオリーブオイルを入れる器が出来るのではないかと考えていました。普通の皿にオリーブオイルをパンに浸した時に、余分なオイルを切りたいのですが出来ないので、中央を盛り上げた場所でオイルを切れるようにしたのです。このオリーブオイル皿は評判もよく現在でも販売されているのです。


いつの間にか、日本でオリーブオイルは食生活に無くてはならないものになりましたが、わが家でも例えば、“冷や奴”の味付けに今まで醤油だったものが、オリーブオイルと塩に変わってしまったのです。オリーブオイルも、スペイン産やイタリア産など沢山の味見をしてきました。段々オリーブオイルを生もの用に加熱用に幾種類ものオリーブオイルを使い分けるようになりました。

 

今回ご紹介するのはスペイン南部アンダルシア地方の、燻製のフレーバーのあるオリーブオイルです。スペインはオリーブオイルの生産量が世界でもトップなのですが、その中でもアンダルシア地方は80%の生産をしている地域です。オリーブオイルの生産をしているのはカスティージョ・デ・カネナ社で、カステージョはスペイン語で城という意味で社名は「カネナ城」なのですが、この地域は12世紀、イスラムとキリスト国のレコンキスタ(イスラムに制服された国土の奪還)の時代からある要塞施設として利用された建物で、その後フランシスコ王がルネッサンス様式の壮大な宮殿へ形を変えたのです。その城が時をこえてヴァーニョ家の手にわたり保護され、住み続けられているスペインの文化遺産で、オリーブオイルの生産は1780年から行われています。

 

しかし、数多くあるオリーブオイルの生産者としてカスティージョ・デ・カネナ社は新興の会社で、ヨーロッパの一流レストランのシェフから高く評価されるようになったのは、わずかここ10年とのことです。このオリーブオイルを教えてくださったのは、銀座のフレンチ「トトキ」の十時亨シェフです。このカスティージョ・デ・カネナ社の“冷燻オリーブオイル アルベキーナ種”をはじめて味見した時はびっくりしました。確かに冷燻独特のフレーバーがあるのですが、燻製臭がクリアで澄ましバターのようにすっきりしているのです。フランス料理の定番に「ソーモン・フュメ(生サーモンの燻製)」がありますが、良いサーモンが手に入ったら、自宅でそのままこの冷燻オリーブオイルをかけて、後は岩塩とケーパとレモンで簡単にレストランの味が再現出来るのです。この冷燻オリーブオイルは聞くところによると、「エキストラバージンオリーブオイルの繊細な味をこわさずに、スモーキーな香りをプラスしたい。生食で美味しいスモークオイルを作ってくれないか」と、スペインのある有名スペイン料理店シェフの一言から生まれたらしいのです。食材をスモークする際には温かな煙で燻す「温燻」と、冷たい煙で燻す「冷燻」がありますが、冷燻になると燻製の煙が完全に冷えていないといけないので、作る手間や季節が大切になるのです。以前、花巻のほろほろ鳥で有名な「石黒農場」の冷燻場を見学したことがあります。燻した煙は長い通路を経て冷まされるのですが、その途中に、大きな石から段々小さな石が濾過器になるように出来ており、ほどよい燻製がこれで出来上がるのです。もうひとつは、岩手県の宮古市にある鮭の燻製を作っている生産者は、岩手県と青森県の県境にある「サイロ」を使っているのですが、冬場に雪で覆われて外気温がマイナス20度の環境とサイロの高さを利用して、上質の冷燻を作っているのです。そう考えるとスペインのある有名スペイン料理店のシェフが最初からそのまま使える「冷燻オリーブオイル」が欲しい理由もわかりますね。普通のオリーブオイルと違い、なんでも使える訳ではないですが、工夫次第で、刺身や加熱して冷たくした肉をカルパッチョ状にしてこの冷燻オリーブオイルで試して自分のレパートリーを増やすのは楽しみなことです。

※掲載情報は 2017/06/02 時点のものとなります。

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キュレーター情報

後藤晴彦(お手伝いハルコ)

アートディレクター・食文化研究家

後藤晴彦(お手伝いハルコ)

後藤晴彦は、ある時に料理に目覚め、料理の修業をはじめたのである。妻のことを“オクサマ”とお呼びし、自身はお手伝いハルコと自称して、毎日料理作りに励んでいる。
本業は出版関連の雑誌・ムック・書籍の企画編集デザイン制作のアート・ディレクションから、企業のコンサルタントとして、商品開発からマーケティング、販促までプロデュースを手がける。お手伝いハルコのキャラクタ-で『料理王国』『日経おとなのOFF』で連載をし、『包丁の使い方とカッティング』、『街場の料理の鉄人』、『一流料理人に学ぶ懐かしごはん』などを著す。電子書籍『お手伝いハルコの料理修行』がBookLiveから配信。
調理器具から食品開発のアドバイザーや岩手県の産業創造アドバイザーに就任し、岩手県の食を中心とした復興支援のお手伝いもしている。

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