東日本大震災からの復活。岩手老舗醤油屋の新たな挑戦「短角牛のトマトスープ」

東日本大震災からの復活。岩手老舗醤油屋の新たな挑戦「短角牛のトマトスープ」

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醤油屋が作った短角牛の濃厚トマトスープ

東日本大震災からの復活。岩手老舗醤油屋の新たな挑戦「短角牛のトマトスープ」

東日本大震災から2年目に岩手県陸前高田を訪れました。あの有名になった「奇跡の一本松」のある町です。案内してくれたのは八木澤商店の河野通洋社長で、この日は東京で岩手の催事をするために、「賛否両論」笠原料理長と「オステリア・ルッカ」桝谷シェフを岩手に招いての生産者視察の旅の途中でした。震災後に本社と工場は津波で流されて、内陸の小学校跡に仮の店舗と工場を置いていたのです。そして、陸前高田の少し高台にある神社の階段を登りながら、河野社長は(階段の半ばで)ここまで、津波が来たんですよ、と言ってその当時の写真を見せてくれました。神社の下には雑草がぼうぼうと生えて八木澤醤油店の本社と工場の土台のみが残り、その先の湾内の端には「奇跡の一本松」があります。

 

現在の八木澤商店校の社長は9代目で、創業は1807年に遡り、元号で言ったら文化4年です。文化4年は10代将軍徳川家斉の治世で田沼意次が老中を勤めていた頃です。当時は造酒屋の八木澤酒店として出発し、大正時代に醤油製造を手がけた老舗なのです。そして、3月11日の東日本大震災で全てを失ってしまうのですが、醤油は委託製造しながら困難を乗り越えて、今年になり自社工場で昔ながらの醤油をさらに凌駕する製品を作り上げていたのです。はじめて八木澤商店の醤油を味わったのは、「分とく山」の野崎洋光料理長とイベントをした時に、野崎さんに食材を選んでいただいた中に入っていたのです。まぁ、よく見ると八木澤商店のロゴは野崎さんの揮毫したものでしたが。

東日本大震災からの復活。岩手老舗醤油屋の新たな挑戦「短角牛のトマトスープ」

今回ご紹介するのは、醤油ではなく、トマトスープです。醤油屋がトマトスープと思う方もいるのではないでしょうか。実はこれも震災後に、陸前高田の4つの会社が共同で立ち上げたブランド「madehni(まで〜に)」の中の八木澤商店の「短角牛の濃厚トマトスープ」なのです。脂身の少ない短角牛の肉の旨味と濃い目のトマトペーストがマッチして、さらに八木澤醤油が加わり、洋風をベースにしながら、和のテーストを感じるのです。どこか、老舗の洋食屋さんがお店で出す味わいで、個人的にはこのスープはご飯でいただくのが一番美味しいと思うのです。この濃厚スープに茹でたジャガイモなどの野菜を対足してシチュー風にしても旨いです。震災の記憶もだんだん薄れてきていますが、被害にあった地元ではまだ、まだ、復興も半ばです。本業の他の商品作りも地元再生のためのひとつで、これからも、商品を紹介や、購入する形で支援を続けたいと思うのです。

※掲載情報は 2015/11/05 時点のものとなります。

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キュレーター情報

後藤晴彦(お手伝いハルコ)

アートディレクター・食文化研究家

後藤晴彦(お手伝いハルコ)

後藤晴彦は、ある時に料理に目覚め、料理の修業をはじめたのである。妻のことを“オクサマ”とお呼びし、自身はお手伝いハルコと自称して、毎日料理作りに励んでいる。
本業は出版関連の雑誌・ムック・書籍の企画編集デザイン制作のアート・ディレクションから、企業のコンサルタントとして、商品開発からマーケティング、販促までプロデュースを手がける。お手伝いハルコのキャラクタ-で『料理王国』『日経おとなのOFF』で連載をし、『包丁の使い方とカッティング』、『街場の料理の鉄人』、『一流料理人に学ぶ懐かしごはん』などを著す。電子書籍『お手伝いハルコの料理修行』がBookLiveから配信。
調理器具から食品開発のアドバイザーや岩手県の産業創造アドバイザーに就任し、岩手県の食を中心とした復興支援のお手伝いもしている。

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