江戸から続く老舗のふんわりやわらかな「久寿もち」

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本わらび粉ときな粉の風味が醸し出す控えめでやさしい味わい

江戸から続く老舗のふんわりやわらかな「久寿もち」

江戸風お菓子司「長門」は、創業が享保年間といいますから300年近い歴史を誇る、東京でも老舗中の老舗の和菓子店。代々、徳川家に菓子を献上してきた菓子商で、もとは神田須田町に店を構えていましたが、戦災で焼失したため、戦後、現在の日本橋へ移ってきたと聞きます。この店の名物「松風」は、徳川家への献上菓子であった瓦せんべいを再現したもの。あまり数が作れないということで、なかなかいただくことができない貴重品ですが、おだやかなみその風味が魅力で、私もファンの一人です。とはいえ、私のこの店で一番のお気に入りは、きな粉がたっぷりかかった「久寿もち」です。くずもちといっても、長門の久寿もちは、関西でいうところの「わらびもち」。一般的に東京のくずもちは、小麦粉でんぷんを発酵させたもので作りますが、長門では本わらび粉を使用しているのです。

江戸から続く老舗のふんわりやわらかな「久寿もち」

昭和の初めに先代が始めたということですが、その頃の東京では、わらびもちの名がなじみではなかったため、よく知られている「くずもち」の名をとったとのことです。わらび粉と砂糖、水を合わせて透明になるまで丁寧に練り上げ、冷やし固めてからくずもちと同じ三角に切った久寿もちは、ふるふると揺れ、口に含むととろけるよう。ほんのりとした甘さに、だれもがホッとなごむことでしょう。深煎りのきな粉もまた格別で、竹皮風の包みを開いたとき、ふわっと広がるその香ばしさといったら……香りも味わいの一部と感じます。これからの季節は、冷蔵庫でちょっと冷やしていただくのもまた美味。日持ちは2日ですが、そんな心配は無用です。買って帰れば、瞬く間になくなってしまうことでしょう。お店でも、夕方には売り切れてしまうこともあるとかで、早めに出かけられることをおすすめします。

江戸から続く老舗のふんわりやわらかな「久寿もち」

※掲載情報は 2015/04/12 時点のものとなります。

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キュレーター情報

岸朝子

食生活ジャーナリスト

岸朝子

大正12年、関東大震災の年に東京で生まれ、女子栄養学園(現:女子栄養大学)を卒業後、結婚を経て主婦の友社に入社して料理記者歴をスタート。その後、女子栄養大学出版部に移って『栄養と料理』の編集長を10年間務める。昭和54年、編集プロダクション(株)エディターズを設立し、料理・栄養に関する雑誌や書籍を多数企画、編集する。一方では、東京国税局より東京地方酒類審議会委員、国土庁より食アメニティコンテスト審議員などを委託される。
平成5年、フジTV系『料理の鉄人』に審査員として出演し、的確な批評と「おいしゅうございます」の言葉が評判になる。
また、(財)日本食文化財団より、わが国の食文化進展に寄与したとして食生活文化金賞、沖縄県大宜味村より、日本の食文化の進展に貢献したとして文化功労賞、オーストリア政府より、オーストリアワインに関係した行動を認められてバッカス賞、フランス政府より、フランスの食文化普及に努めた功績を認められて農事功労賞シュバリエをそれぞれ受賞。
著書は『東京五つ星の手みやげ』(東京書籍)、『おいしいお取り寄せ』(文化出版局)他多数。

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