大人の酒場だけじゃない。休日の午後にも楽しんでほしいリラックス系クラフトジン

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王道の素晴らしさを継承しながらも新しいジンの世界を提示

ジンはある意味ではとても自由な酒だ。蒸留酒でありジュニパーベリー(セイヨウネズという針葉樹の球果)で香りづけをしさえすればその原料は、大麦、ライ麦や、じゃがいも、その他でもいい。樽の使い方であれ、どこまでフレイバーをつけても熟成をかけても、そこにジュニパーベリーの存在があればそれはジンとなる。もちろん、それが世界中にいる王道のジン好きに認められるかどうかは別としても、その自由さもやはりジン。


そこで生まれたクラフトジンという流れ。ただ、自由であることは素晴らしいことだけれど、もちろんそれは、玉石混合の要因ともいえる。ロンドンの老舗ホテルのバーで、いつものマティーニをオーダーする気品高い紳士にとって、今、僕が手にしている、どこかのガレージで造られたジンは唾棄すべきものかもしれない。でも、それでいい。クラシックの名演奏家が一瞬にして耳を塞ぎたくなるパンクロックが世界を変えることもある。ビートルズの鳴らした一発のイントロで世界は変わった。その一方で、やはりクラシックの名演も世界を感動で包み続ける。ビールにしても工芸品にしても、クラフトというジャンルは、王道があってこそ輝くし、王道もクラフトがあるからこそ輝くのだろう。

 

ただクラフトというジャンルは、パンクだからいいというものではない。クラシックを新しい形で表現することだったり、常にクオリティに対して真摯でいなければいけないし、なにもテイストをアバンギャルドにすることが目的ではない。造り手が愛すべき対象に真剣に自分のスタイルで挑む。それこそがクラフトの要件。歴史を変えることが目的ではなく、結果として歴史に新しい流れを作り、そのジャンルをさらに魅力的なものにしていくのだ。

大人の酒場だけじゃない。休日の午後にも楽しんでほしいリラックス系クラフトジン

ジンの王国のひとつであるドイツ。旧西ドイツの首都だったボンから届いたクラフトジンは、まさに真摯。『ジークフリート・ラインラント・ドライジン』。スタイルはむしろクラシカル。でもそこに新しい息吹がふんだんに。口当たりが柔らかで、余韻の中からすこしずつ複雑なフレイバーが現れてくる。それは決して押し付けがましくなく、ましてや決してよい意味ではない「オヤジの飲み物」的なアルコールの強さも感じさせない。もちろん飲み放題メニューでみるようなジントニックの原料と化したものでもない。繊細なタッチの中から少しずつ、18種類使用されているというボダニカルから生まれる明るく、しかし複雑に編み込まれたアロマとテイストが体にしみ込んでくる。

 

そのときに感じるのは、リラックス。ジン=アルコールという一般的に広がってしまったイメージとは真逆の、セラピーにも近い感覚。少し西日が強まったテラス、水辺のひととき。そんなリラックスした場面で登場させたいジンがそこにあった。緑と赤のガーデン、アフタヌーンティで茶葉を楽しくセレクトし、そこに添えるフルーツも楽しむように、グラスに注がれたジークフリートの香りをまずはそのままストレートで楽しみ、あとはロックでもお気に入りのトニックウォーターでも冷たい水でも、お好きなように。そのたびに感じられるリラックス感。

激しくギターをかき鳴らすような時代とジャンルへのアンチテーゼではなく、壮大な交響楽をやわらかな弦楽四重奏にしたような、ロックのスタジアムツアーをアコースティックでローファイなミニコンサートにしたような、王道へのリスペクトと今の時代のゆるやかな気持ちに寄り添った真摯さもクラフトのあるべきひとつの姿。ジークフリートという名前の由来は、ドイツの英雄叙事詩『ニーベルンゲンの歌』に登場する英雄ジークフリートから。ドラゴンとの闘いの返り血によって不死身の体となった彼に、そのとき一枚だけ貼りついた菩提樹の葉。それが彼の運命を変えて……。その菩提樹も18種類のボダニカルのひとつとしてこのジンに溶け込んでいる。菩提樹は英雄ジークフリートの運命を変え、そしてジークフリード・ドライジンの運命をどう変えていくのか。そんな菩提樹を巡る物語もまた、ドイツで古くから愛される英雄物語と新しいジンを創るという志しの現れなのだろう。

 

ジンのビギナーの方にも、ジンの難しさについていけなかった人にも、そして、ジンマニアたちにも。どうぞリラックスしながらお楽しみを。

※掲載情報は 2017/05/21 時点のものとなります。

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キュレーター情報

岩瀬大二

ワインナビゲーター

岩瀬大二

MC/ライター/コンサルタントなど様々な視点・役割から、ワイン、シャンパーニュ、ハードリカーなどの魅力を伝え、広げる「ワインナビゲーター」。ワインに限らず、日本酒、焼酎、ビールなども含めた「お酒をめぐるストーリーづくり」「お酒を楽しむ場づくり」が得意分野。
フランス・シャンパーニュ騎士団 オフィシエ。
シャンパーニュ専門WEBマガジン『シュワリスタ・ラウンジ』編集長。
日本ワイン専門WEBマガジン「vinetree MAGAZINE」企画・執筆
(https://magazine.vinetree.jp/)ワイン専門誌「WINE WHAT!?」特集企画・ワインセレクト・執筆。
飲食店向けワインセレクト、コンサルティング、個人向けワイン・セレクトサービス。
ワイン学校『アカデミー・デュ・ヴァン』講師。
プライベートサロン『Verde(ヴェルデ)』でのユニークなワイン会運営。
anan×本格焼酎・泡盛NIGHT/シュワリスタ・ラウンジ読者交流パーティなど各種ワインイベント/ /豊洲パエリア/フィエスタ・デ・エスパーニャなどお酒と笑顔をつなげるイベントの企画・MC実績多数。

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