テーブルの上のレッドカーペット。マリリン・モンローに愛されたシャンパーニュ

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カンヌ、アカデミー賞……華やかさをまといながら、やすらぎを

レッド、ブラック、ゴールド。スタイリッシュでもあり、ゴージャスでもあり、デカダンスでもあり、官能と孤高とのインテンスでもあり。パイパー・エドシックというアイコンは、シャンパーニュの世界にあって、常に強烈な存在感を放ってきた。大胆なルックスは、メゾンが持つ果敢な歴史そのもの。1785年、設立者フローレンス=ルイ・エドシックの野望は、「王妃にふさわしいシャンパーニュを」。その野望どおり、マリー・アントワネットに献上された。歴史を重ね、マリリン・モンローが愛し、カンヌ国際映画祭のひとつの顔でもあり、アカデミー賞のレッドカーペットを飾ってきた。ヴァンクリーフ&アーベルとのマスターピースなボトルに、ジャン=ポール・ゴルチエとのボンデージなセクシーかつ力強く女性の魅力を高らかに宣言した大胆なボトルなど、常に華やかな話題を提供してきたのも、1785年の野望を忠実に守ってきたからなのだろう。

 

しかし、シャンパーニュそのものは決して押し出しが強いものでも、トレンドに乗っかった軽薄なものではなく、ましてや錬金術的なマジックでもなく、ワインメイカーであるレジス・カミュ氏の繊細さと緻密さと畑への畏怖と感謝がゆったりと語りかけてくれる、豊かな世界を見せてくれる。王家もカンヌもハリウッドも、アーティストたちも。中身の空疎な外見だけで共感するわけはない。映画作家や女優、アーティストはものづくりの人たちであり、それを表現する人たちだ。シャンパーニュとしての本質を持っていない、ただの黄金色の泡のお酒を認めることはないだろう。

テーブルの上のレッドカーペット。マリリン・モンローに愛されたシャンパーニュ

2002年からシェフ・ド・カーヴ(最高醸造責任者)に就任したレジス・カミュ氏は、業界で名誉ある「IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)」の「スパークリングワインメーカー・オブ・ザ・イヤー」を通算8度獲得するスターではあるが、自身をスターとして押し出すことはない。2度インタビューする機会があったが、飾らず、真摯に畑とブレンドを語り、気さくに近況を語り合う。そんなキャラクター。葡萄生産者との協調を重んじ、コマーシャルなぶち上げはしないが、着実に革新を続ける。レッド、ブラック、ゴールドのスタイリングが決して浮つかずに、歴史を積み重ねているのは、ものづくりの情熱が裏側にあるからなのだ。

 

彼の思い入れが優しく爽やかにすっと心に落ちてくるような作品が、「エッセンシャル キュヴェ ブリュット」。100以上の区画から、このシャンパーニュらしいかわいらしい透明感と確かな香ばしさや深みのゆるやかな融合を表現するための葡萄を集めた。青リンゴや洋ナシのジュースのみずみずしい余韻が長く続き、そのきらめきが少しずつ赤い果実の柑橘の酸味に心地良く変わり、すっと消えていく。力強さではなくゆったりきらきらしたジュースをかみこむような、不思議な感覚も楽しい。

テーブルの上のレッドカーペット。マリリン・モンローに愛されたシャンパーニュ

美しいロゼカラーながら、黒い果実、ブラッドオレンジ、リコリスの、ほどよく濃厚な飲み応え。それがキャンディのかわいらしさを感じながら楽しめる、あどけなさと強さを併せ持った「ロゼ ソヴァージュ」。そして「レア」という名を冠した、ボトルにあしらわれたティアラが印象的なトップキュヴェは、1976年に初めて世に出て以来02年まで8度しかリリースされていない厳選の逸品など、ラインナップの幅は広いが、そのどれもがシャンパーニュという土地やシャンパーニュで収穫される葡萄へのリスペクトが込められた上で、世界中で飲む人の高揚感をもリスペクトしてくれている。豪華なパーティでなくてもいい。カミュ氏の気取らないキャラクターは、決して肩の凝るようなシャンパーニュは生み出さない。ちょっとだけご褒美、少し気分をアゲたい時間、そんなパーティに、あるだけでその場がレッドカーペットになるシャンパーニュを、どうぞ。

※掲載情報は 2016/05/24 時点のものとなります。

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キュレーター情報

岩瀬大二

ワインナビゲーター

岩瀬大二

MC/ライター/コンサルタントなど様々な視点・役割から、ワイン、シャンパーニュ、ハードリカーなどの魅力を伝え、広げる「ワインナビゲーター」。ワインに限らず、日本酒、焼酎、ビールなども含めた「お酒をめぐるストーリーづくり」「お酒を楽しむ場づくり」が得意分野。
フランス・シャンパーニュ騎士団 オフィシエ。
シャンパーニュ専門WEBマガジン『シュワリスタ・ラウンジ』編集長。
日本ワイン専門WEBマガジン「vinetree MAGAZINE」企画・執筆
(https://magazine.vinetree.jp/)ワイン専門誌「WINE WHAT!?」特集企画・ワインセレクト・執筆。
飲食店向けワインセレクト、コンサルティング、個人向けワイン・セレクトサービス。
ワイン学校『アカデミー・デュ・ヴァン』講師。
プライベートサロン『Verde(ヴェルデ)』でのユニークなワイン会運営。
anan×本格焼酎・泡盛NIGHT/シュワリスタ・ラウンジ読者交流パーティなど各種ワインイベント/ /豊洲パエリア/フィエスタ・デ・エスパーニャなどお酒と笑顔をつなげるイベントの企画・MC実績多数。

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