渋谷区西原で人気のブーランジェのメレンゲ菓子

渋谷区西原で人気のブーランジェのメレンゲ菓子

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仕事場の代々木上原、幡ヶ谷、富ヶ谷周辺はパン屋さんが大変多い地域なのです。この当たりに20数店舗のパン屋さんがあり共存しているのです。そのパン屋さんも一般向けのパンも販売の他に、レストランなどから直接注文を受けて製造販売しているパン屋さんもあるのです。そのひとつにカタネベーカリーという人気のパン屋さんがあります。

 

あまり人通りの多く無い路地に、知らなければ通り過ぎるように目立たないパン屋さんで売り場は3坪の小さなパン屋さんです。いつもカタネベーカリーの前には人が並んでいるのですが、店内は3人も入れば満員になる売り場なのですが、80種類ものパンが並んでいるのです。町のパン屋さんとして2002年にオープンして15年で、地元に愛される店ですが、実はサードウェーブコーヒーとして米国から上陸した、ブルーボトルコーヒーに選ばれたパン屋さんなのです。

 

このカタネベーカリーのパンはランチ用や自宅での朝食用でもよく食べているのですが、今回ご紹介するのはパンではなく”メレンゲ”なのです。お菓子作りや料理をされる方は”メレンゲ”というと直に判ると思いますが、手元にある『フランス料理ハンドブック』(辻調グループ編著・柴田書店)から引用してみます。「メレンゲmeringue・卵白に砂糖を加えて泡立てたもので、別立てのスポンジ生地、ムース、クリームなどのベースに使う。またはそれを感想焼きにしたものもメレングと呼び、クリームやチョコレートと組み合わせて菓子を作る。メレンゲにアーモンドやヘーゼルナッツの粉末を加えて焼いた物は、シュクセ(アーモンドを煎って糖衣をかけ、着色したもの)ブログレなどと呼び同様にクリームなどと合わせて菓子をつくる。メレンゲは卵白と砂糖の配合によって、かたさや焼いたときの歯ごたえが異なる」つまり、卵の白身と砂糖をませ合わせてふわふわにして、菓子やデザートの半製品で、これに風味をつけて焼き上げると菓子になるのです。元々メレンゲはスイスのマイリンゲンという町で発案され、ドイツ経由でフランスへ伝わったと言われていあます。パン屋さんでも卵は、全卵、卵黄、卵白と用途別で使いわけします。この卵白でカタネベーカリーではメレンゲを作っているのです。

渋谷区西原で人気のブーランジェのメレンゲ菓子

カタネベーカリーのメレンゲにはノーマルなパターンの他に焙じ茶を使ったものもあります。先ほどのメレンゲの定義で「メレンゲにアーモンドやヘーゼルナッツの粉末を加えて焼いた物」の粉末にほうじ茶に替えれば良いのです。卵を素材にして使いのは完全に調理科学の分野なのです。全卵、卵黄、卵白と区別するのは元々卵のもっているたんぱく質の凝固温度が違うのです。卵白のタンパク質卵白アルブミンを凝固させるには、75度~78度(以上)の高温を加える必要があるのですが、この温度では卵黄たんぱく質も完全に凝固してしまします。卵黄はそれよりも低く60度~65度くらいの温度で凝固するので、卵黄と卵白は別々にした方が加工しやすいのです。メレンゲ自体の構造は、卵白をかき混ぜると卵白に中に多くの気泡が含まれます。この閉じ込められた気泡が卵白の"泡”を安定させるのです。そして、この卵白の気泡をさらに安定させるために砂糖を使うのです。砂糖は気泡の中で簡単に融けてしまい、柔らかなメレンゲには砂糖を少なく、硬くするには砂糖を多くします。この卵白と砂糖を合わせたものをオーブンで焼くと熱が気泡を膨張させて、メレンゲが膨張し、卵白のたんぱく質も熱で凝固して気泡が固定されて焼き菓子が完成するのです。

渋谷区西原で人気のブーランジェのメレンゲ菓子

このカタネベーカリーのメレンゲ菓子は1袋330円(税別)でとっても安いのです。口に入れた瞬間にふわっと溶け出し消えていく淡雪のようです。あぁ、ちなみ和菓子の淡雪(あわゆき)は水を加えた寒天を火にかけて溶かし、砂糖を加えてしばらく煮詰めたものに、泡立てた卵白をあわせて固めたもので、これもメレンゲの一種です。あまりにもシンプルな焼き菓子ですが、一流のブーランジェが作るメレンゲが近くにあり食べられるのは喜ばしいことです。ただ、すぐ売り切れになるのでご注意ください。

 

参考文献
『フランス料理ハンドブック』(辻調グループ 辻静雄料理研究所 編著・柴田書店)
『フランス伝統菓子図鑑』(大森由起子 世界文化社)
『フランス料理の「なぜ?」に答える』(エルヴェ・ティス 須山泰秀 訳・柴田書店)

※掲載情報は 2017/02/24 時点のものとなります。

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キュレーター情報

後藤晴彦(お手伝いハルコ)

アートディレクター・食文化研究家

後藤晴彦(お手伝いハルコ)

後藤晴彦は、ある時に料理に目覚め、料理の修業をはじめたのである。妻のことを“オクサマ”とお呼びし、自身はお手伝いハルコと自称して、毎日料理作りに励んでいる。
本業は出版関連の雑誌・ムック・書籍の企画編集デザイン制作のアート・ディレクションから、企業のコンサルタントとして、商品開発からマーケティング、販促までプロデュースを手がける。お手伝いハルコのキャラクタ-で『料理王国』『日経おとなのOFF』で連載をし、『包丁の使い方とカッティング』、『街場の料理の鉄人』、『一流料理人に学ぶ懐かしごはん』などを著す。電子書籍『お手伝いハルコの料理修行』がBookLiveから配信。
調理器具から食品開発のアドバイザーや岩手県の産業創造アドバイザーに就任し、岩手県の食を中心とした復興支援のお手伝いもしている。

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