伊達政宗ゆかりの地 仙台味噌の逸品

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スッキリした辛口ながら、大豆の甘味やコクも!仙台味噌「谷風寒仕込み特選味噌」

旅の醍醐味のひとつは地元の郷土料理を味わうことではないでしょうか。


私にとってはそれに加え、地元の醤油・酒・酢・味噌といった伝統醸造蔵を訪問すること。人と味と風土の織りなす物語はいつも豊かで、その世界はとてもとても魅力的なのです。

 

今夏旅した仙台の味噌をご紹介しましょう。


仙台には、藩主伊達政宗が城下で造らせた仙台味噌(せんだいみそ)があり、醸造所は御塩噌蔵(おえんぞくら)と呼ばれました。その味は仙台人のみならず、江戸っ子にも親しまれ愛されてきました。


仙台を熟知したS氏のご采配で、仙台味噌の阿部幸商店を訪れることになりました。阿部幸商店は、江戸末期1864年創業で伝統製法を今も受け継いでいる老舗なのです。屋号の通り、代々当主の名前には阿部幸を引き継ぎ、6代目現当主は阿部幸悦さんです。

 

蔵では、6代目がにこやかに出迎えて下さって、製造に携わる若い職人さんと共に丁寧に蔵内を案内して下さいました。

 

蔵はこぢんまりとした4階建てです。上階から下階へと、蒸し場・潰し場・混ぜ場・熟成場が効率的に作業順に設けられています。機械類は50年以上使用している特注品です。

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次の仕込み時期を待つ機械類(大豆・米の蒸し器)

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米麹を作る機械には震災で傷ついた部分もあった


味噌仕込みは寒い時期の仕事のため、今回は上階での作業を見ることはできませんでしたが、機械類はとても大切に使われていることはすぐわかりました。作業場は丁寧に清潔に手入れされ、次の冬を待っています。

 

阿部幸味噌の原料は大豆・米・塩だけで、発酵は蔵付き天然酵母によるため、製造には一年半以上という長い時間を要するのです。昔は容易に手に入った良質の地元の原料の調達が難しく、今では海外からの食材料で昔ながらの変わらぬ味を守り続けるための、努力と工夫が常に求められているとのことです。

 

一階の味噌蔵の扉を開けると、味噌の芳醇な空気に優しく包みこまれ、つい深呼吸をしていました。

 

創業時から使い続けられている直径・高さ共に180㎝を超える巨大樽が並びます。この木樽を作れる人はもうほとんどいないため、貴重なものです。
味噌の表面は乾きすぎないように石が敷き詰められています。

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創業時から使い続けられている樽

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熟成を待つ味噌の上には焼いて滅菌した石を置く

 

樽の中の味噌たちは、一見静かに眠っているかのように見えますが、そっと耳を近づけるとピチッピチッとかすかにささやくような音を立てているのです。その音と共に小さな泡を生みながら、懸命に熟成を進めているのです。

伊達政宗ゆかりの地 仙台味噌の逸品

小さな泡が生まれ、ピチッピチッと囁きながら熟成する味噌

 

成長する味噌の様子を見計らって、何度も別の樽に移し、空気を入れてやると、まろやかな美味しい味噌になるため、製品になるまでに3~6回の樽移動をしています。

 

伝統製法の味噌は生き物。時間と手間は必要ですが、本当のところは、味噌自身が発酵熟成をせっせと進められるように心地よい環境作りをするのが職人の仕事。見守りと手助けだけが人間ができることです。美味しい味噌造りも子育てと同じく、手を出し過ぎず深い愛で待つことが要のようです。

 

蔵で出来上がった味噌は濃いめの褐色。一口舐めると、スッキリとした辛口ですが、後味には大豆の甘味が感じられ、コクと香りが追いかけてきます。もう一口、もう少し、と後を引く味なのです。

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何度も味噌に空気を入れ、味をまろやかにする

 

この味噌なら味噌汁だけでなく、どんな料理にも合いそうです。夏の朝採りのみずみずしい胡瓜に付けてそのままかじっても美味しいですし、特に深みを加えたい隠し味としても活躍しそうです。レシピのいくつかをご紹介しましょう。

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超簡単!そのまま好みの野菜類につけるだけ。アレンジとしてマヨネーズやニンニクを加えて洋風にしてもOKです。


写真は、取れたて胡瓜に味噌をつけて、グラスには夏バテを防ぐ冷やした麹甘酒を注いで(夏の午後のおやつにも良し)


麹甘酒1:味噌2を混ぜ、少しなめらかにしたものを床にして豚肉や魚を一晩漬け、焼くととっても美味しいです。(発酵食品で美と健康を!)

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引き割り納豆を入れたキノコ・薄揚げ・豆腐の味噌汁。最後に三つ葉か葱を散らします。
(良質のたんぱく質と食物繊維で元気な一日を!)

 

ロールケーキにも味噌をちょっぴり隠し味として加えて焼いてみました。クリームにもほんの少し加えると、濃厚な深い味わいになりました!

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スポンジに味噌を入れると照りが出て、味に深みとコクが加わります

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季節のフルーツを添え、黒蜜と抹茶をかけて召し上がれ!

 

味噌は日本北から南まで地域ごとに個性豊かな様々な味があり、栄養価も高く、生活習慣病を遠ざける食品としても認められる伝統調味料ですから、毎日、和洋中華といろいろな料理やデザートに使って口にしたいものです。

 

今回ご紹介した阿部幸商店の「谷風寒仕込み特選味噌」は、今も伝統の製法で愛情を注いで作られるとても美味しいお味噌です。是非一度試してみて下さい。

谷風寒仕込み特選味噌

株式会社阿部幸商店

※掲載情報は 2016/08/28 時点のものとなります。

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キュレーター情報

長尾典子

ライフスタイルデザイナー

長尾典子

日本伝統の知恵と美を取り入れた現代の食と暮らし方”Nippon Stylish Life”を提唱。

西宮市内のサロンと各地で、テーブルコーディネート・料理・英語・食文化をテーマに幅広く活動中。

季節開催「Japan Cool Seminar in Tokyo」では伝統美味食をテーマに、レストラン・料亭を会場に、その日だけのオリジナル料理を味わい学ぶ講座。

旅館・ホテルの食空間提案、英語による和食文化、テーブルコーディネートセミナー、オリジナル食器デザイン販売も手掛ける。

著書『12か月のLifestyle Book 食卓からしあわせは始まる』エピック
  『和食の力に魅せられて 伝統美味食の世界』エピック

食卓文化研究家、食空間コーディネート資格認定講師、卓育インストラクター、カラーコーディネーター、英語講師。

食空間コーディネート協会理事 
京都文教短期大学、大阪夕陽丘短期大学非常勤講師。
奈良女子大大学院生活環境修士。現在、現在、龍谷大学博士後期課程。
mail:nagao@a-de-v.com

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