ネーミングも楽しい 存在感たっぷりの「切腹最中」

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濃厚なあんと、歯ごたえのある香ばしい皮が好相性

ネーミングも楽しい 存在感たっぷりの「切腹最中」

新橋4丁目に店を構える「新正堂」は、1912年(大正元年)創業の老舗和菓子店。この店の菓子はユニークな名前のものが多く、愛宕神社の石段を模した「出世の石段」、景気回復を願った「景気上昇最中」など、三代目当主、渡辺仁久さんのアイデア溢れるしゃれっ気たっぷりの商品が並んでいます。なかでも人気なのが、一度その名を聞いたら忘れられない「切腹最中」です。これは、以前の店舗が、忠臣蔵の浅野内匠頭が切腹したという田村右京大夫の屋敷跡にあったことにちなんで、考案されたものとか。皮からは、まさに“切腹”のようにあんがはみ出し、そこに、白い紙が〝鉢巻“風にひと巻きしてあります。さらには、黒いあんばかりで「腹黒い」と思われてはいけないというので、中には白い求肥も忍ばせてあると言いますから、三代目の遊び心も念の入ったものです。

周囲の人達はみな、「切腹」という名ではいかにも縁起が悪いと猛反対したそうですが、三代目はそれを押し切り1990年(平成2年)に発売。これが瞬く間に評判を呼び、今では店の看板商品となっています。もちろん、人気の理由はユニークな名前と形だけではありません。主人自ら生産者のもとに通って選び抜いたという十勝産の高級小豆を原料に、「直火炊き」という製法で作られたあんは、豆の風味豊かで、甘みもしっかり。宮城産のもち米で作られた厚めの皮は、香ばしさとパリッとした食感が抜群。あんとのバランスも絶妙で、名前に魅かれて買い求め、味のよさでリピーターとなる人が多いというのもうなずけます。「切腹」のイメージから、仕事で失敗したときの「お詫びの品」に、あるいは、「腹を割って話しましょう」というメッセージを込め、買っていく人もいるとか。ビジネスマン御用達の最中でもあるようです。

ネーミングも楽しい 存在感たっぷりの「切腹最中」

※掲載情報は 2015/02/11 時点のものとなります。

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キュレーター情報

岸朝子

食生活ジャーナリスト

岸朝子

大正12年、関東大震災の年に東京で生まれ、女子栄養学園(現:女子栄養大学)を卒業後、結婚を経て主婦の友社に入社して料理記者歴をスタート。その後、女子栄養大学出版部に移って『栄養と料理』の編集長を10年間務める。昭和54年、編集プロダクション(株)エディターズを設立し、料理・栄養に関する雑誌や書籍を多数企画、編集する。一方では、東京国税局より東京地方酒類審議会委員、国土庁より食アメニティコンテスト審議員などを委託される。
平成5年、フジTV系『料理の鉄人』に審査員として出演し、的確な批評と「おいしゅうございます」の言葉が評判になる。
また、(財)日本食文化財団より、わが国の食文化進展に寄与したとして食生活文化金賞、沖縄県大宜味村より、日本の食文化の進展に貢献したとして文化功労賞、オーストリア政府より、オーストリアワインに関係した行動を認められてバッカス賞、フランス政府より、フランスの食文化普及に努めた功績を認められて農事功労賞シュバリエをそれぞれ受賞。
著書は『東京五つ星の手みやげ』(東京書籍)、『おいしいお取り寄せ』(文化出版局)他多数。

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