魚を育み人に滋養をもたらす「海中林」の一族。

魚を育み人に滋養をもたらす「海中林」の一族。

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昆布でもない。ワカメともちがう。アラメの味わいは唯一無二。

「海中林」という言葉をご存じだろうか。水深2~5m程度の磯場に潜ると、長い棒状の茎を岩に根づかせ、先端にはワラワラと長い枝葉をたなびかせている海藻の群落に出会うことがある。この海の中の林は、様々な生物の棲家となり、その陰で小魚を養い、アワビやサザエ、ウニなどの餌となる。そして我々人間にとっても、日本古来からの欠かさざる浜の食材として存在し続ける海藻たちだ。聞くところによると、海藻を消化できる酵素を持っているのは日本人だけらしいから、大いに味わうがよろしい。便通も良くなるし、ヨード分をはじめとするミネラルの宝庫であるからして。

 これらの仲間にはカジメ、クロメ、そして今回紹介するアラメと、おおまかに分けて3種類あり、それぞれに若い葉を食用にしているが、中でもアラメはえぐみやヨード臭が少なく、地元島根県の隠岐では家庭の定番食材となっている。茎の先に生えている葉の部分を茹でて乾燥すると、このような製品となる。水で戻して適宜用いるのであるが、大まかに切った「幅広」と細く短冊状に切った「幅細」があり、料理の見栄えを気にするならば“細”でもいいが、噛みしめたときの風味は断然“広”がよい。豚肉の切れ端や油揚げの細切りに折り重なって甘い醤油で炒め炊かれたアラメは、沢山作って冷蔵庫に収まる惣菜として秀逸だ。噛み進むほどにカクッとした歯触りと、褐藻特有の滋養がしみ出して、飯のオカズのみならず、冷酒・熱燗、離島の日常の食卓に、静かに息づいているのである。

隠岐 あらめ

伴林アサコ商店

※掲載情報は 2014/11/14 時点のものとなります。

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キュレーター情報

上田勝彦

水産庁加工流通課 魚食普及担当課長補佐

上田勝彦

 世界200ケ国の中にあって、面積にして60位、しかし海岸線にして6位という環境にある我が国ニッポンは、約500種もの食べられる水産物に恵まれ、深い森林が育む豊かな水と相まって、世界でも有数のバランス食「日本料理」を生み出しました。その主役は魚でしたが、この30年間のうちに、肉と油中心へと日常の食の形が変わってしまい、国民全体レベルで健康の不調も増えつつあるようです。いまいちど、私たちの日常の食を見直す時期に来ているのではないでしょうか。
 いまや魚料理は家でつくるものではなく、外食する嗜好品になりつつありますが、これを日常の食卓にもういちど取り戻すことができるならば、必ずや魚に付随する米や野菜が見直され、質の良い国産の肉が輝いてくるでしょう。私たちが住む日本という国は、必要な栄養の全てが揃い、獲る人・作る人・売る人・買う人・食べる人すべてが末永く暮らせるだけの”風土の力”を持っています。ここでは魚を中心に、手に入りやすい鮮魚や加工品、相性の良い水・米・野菜・酒などを紹介することによって、日常の中の輝く恵みを再発見していきたいと思います。

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