晩秋の「ジャケ買い」シリーズ2 謎の紳士

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オーストリアワインの「美しい」に、「楽しい」を加えて

晩秋の「ジャケ買い」シリーズ2 謎の紳士

前回のジャケ買いシリーズは、「オーストラリア」の「謎の少年」で、今回は「オーストリア」の「謎の紳士」。書いていて面白くなってきた(笑)。ということでさらに前回よりも軽いタッチでご紹介。

 

もちろん産地によって、造り手によっての個性というのはある、という前提でオーストリアワインの特徴をざっくりいえば、「美しさ」「清らかさ」「鮮烈さ」ということになるだろうか。ストイックというよりはナチュラル。研ぎ澄まされた酸ではあるけれど、それは人工的に磨きに磨いた、というよりも、清らかな自然がもたらした贈り物。感じるのは豊かな緑、銀嶺、そこから流れるミネラルたっぷりの豊かでゆるやかなきらめく渓流、そして青空と白い雲。代表的な品種は、グリューナー・ヴェルトリーナーという白ワイン品種。まさに「美しさ」「清らかさ」「鮮烈さ」の表現。グリューナーはかの地の言葉で「緑」という意味。その名の通り白ワインというより(まあ、もともと白ワインといっても白色のわけではないのだが)、緑の輝きを感じる色合いと風味。鮮烈な柑橘とほのかなホワイト&ピンクペッパーの刺激が心地良く感じられたら、草原を爽やかに吹き抜ける風、日本人にも懐かしい青蜜柑のような後味から、再び鮮烈な柑橘の長くて静かな余韻。リースリングも、他のエリアよりもやはり素朴で美しい、すがすがしい風景を思い起こさせる味わい。鮮烈だけれど、緊張感はない。赤ワインの代表格であるツヴァイゲルトにしても、やはり特徴は「美しさ」「清らかさ」「鮮烈さ」。いや鮮烈よりもこちらは心地良い軽やかな酸味だろうか。

 

と、こうワインレビューをしていくと、どうにもこのジャケットとイメージ違うんじゃないか?と思われるかもしれない。コケティッシュで、ノスタルジックで、50年代のムーヴィーの1場面のようで。ダンディとペーパームーンが描かれた「リースリング キルヒタール 2013」、ダンディと50年代の人たちが思い描いていた未来のロボットにも見える甲冑の騎士の「ツヴァイゲルト テラン2012」。「グリューナー・ヴェルトリーナー ドナウ 2014」のエチケットも同じような世界観。実はこのダンディこそ、ワインメイカーご本人のクレメンス・シュトローブルさん。オーストリア第3の都市であるリンツで、広告業界で成功し、もともと、望んでいたワインメイカーとの2足のわらじに挑戦。広告という世界に身を投じていた反動なのか、それとも彼の本質なのか。ワイン造りに関しては、コマーシャリズムとは真逆の小規模ブティック的アプローチ。オーストリアでも著名な醸造家をパートナーに、オーストリアでも最も新しい産地とされる場所で、小規模かつ自分たちの個性を表現することに徹底して取り組んでいるとのこと。広告でいえばマーケットよりもクリエイティブを優先し、結果、むしろマーケットでも歓迎されたということになるのだろう。ただ、オーストリアワインの良さである「美しさ」「清らかさ」「鮮烈さ」は変わらない。そして、個性、こだわりがむしろ、「明快なわかりやすさ」として、オーストリアワイン体験の入口となるような大衆性も感じさせてくれる不思議。そう、こだわるのはワイン造りであって、飲む人は存分に楽しんでほしい。そんな気持ちが、このジャケットのポップなセンス、茶目っ気に現れているのかもしれない。

 

そしてこのジャケット、よく見るとなんだかピュアで美しい。それはワイン造りのまっとうさと、人を喜ばせたいという子供のような純真さの表れなんじゃないだろうか。広告という世界に生きてきたからのセンス、エンタメ感を、ただただ純真に自分が造ったワインを楽しんでくれる人のために、なのか。さらにこの方、こんなアバンギャルドなジャケットも。「グリューナー・ヴェルトリーナー シュレッケンベルグ 2012」「リースリング フンベルグ 2012」など、エッチングで描かれたなんとも不可思議なキャラたち。それでもワインは変わらず、「美しさ」「清らかさ」「鮮烈さ」に「明快なわかりやすさ」。遊び心と本質と。謎の紳士、あらため、クレメンスさんの謎掛がまた心地良い。パーティにもギフトにも。見て楽しい、飲んで楽しい。ジャケットとワインのユニークな関係で、また、ワインのある場面が面白くなる。

晩秋の「ジャケ買い」シリーズ2 謎の紳士

※掲載情報は 2015/11/24 時点のものとなります。

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キュレーター情報

岩瀬大二

ワインナビゲーター

岩瀬大二

MC/ライター/コンサルタントなど様々な視点・役割から、ワイン、シャンパーニュ、ハードリカーなどの魅力を伝え、広げる「ワインナビゲーター」。ワインに限らず、日本酒、焼酎、ビールなども含めた「お酒をめぐるストーリーづくり」「お酒を楽しむ場づくり」が得意分野。
フランス・シャンパーニュ騎士団 オフィシエ。
シャンパーニュ専門WEBマガジン『シュワリスタ・ラウンジ』編集長。
日本ワイン専門WEBマガジン「vinetree MAGAZINE」企画・執筆
(https://magazine.vinetree.jp/)ワイン専門誌「WINE WHAT!?」特集企画・ワインセレクト・執筆。
飲食店向けワインセレクト、コンサルティング、個人向けワイン・セレクトサービス。
ワイン学校『アカデミー・デュ・ヴァン』講師。
プライベートサロン『Verde(ヴェルデ)』でのユニークなワイン会運営。
anan×本格焼酎・泡盛NIGHT/シュワリスタ・ラウンジ読者交流パーティなど各種ワインイベント/ /豊洲パエリア/フィエスタ・デ・エスパーニャなどお酒と笑顔をつなげるイベントの企画・MC実績多数。

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